3Dプリンターやっと真価 米新星2社、量産へ進化

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2018/1/16 6:30
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5年ほど前、「設計図をダウンロードするだけでものづくりができる」と世界的に注目を集めた3Dプリンター。期待ほど普及せず先行メーカーの株価は高騰後に暴落したままだ。そんな中、米国では新世代のスタートアップ2社が大手企業から資金を集め、急成長している。革新的な造形スピードと精度で、製品の試作にとどまっていた用途を量産まで進化させる。

■造形スピード、100倍速に

「すぐにできるから、ちゃんと見ててね」。米カリフォルニア州レッドウッドシティにある3Dプリンター企業、カーボン。担当者がボタンを押すと、液体状の樹脂が入った槽の中からみるみるうちに網目模様のオブジェが"浮かんで"きた。

「槽の下から紫外光を当てて樹脂を固め、造形しながら引き上げている」のだが、もとから沈めていたのではと疑いたくなるスピードだ。6センチメートル角の網目状のオブジェができるまで5分ほど。「一般的な製品と比べて100倍速い」という。

カーボンは「メーカーズブーム」と呼ばれた3Dプリンターの流行の最盛期だった2013年に産声を上げた。社名が広く知られるようになったのは、独アディダスがスニーカーの靴底づくりに、カーボンの機械を採用していることを明かした16年ごろからだ。

軽さとクッション性を備えた網目状の靴底は射出成型など従来の製法では作ることが難しく、年を追って納入台数は増加。独BMW、米オラクルなどにも採用先を広げ「顧客や協業先は100社を超える」とルーク・ケリー副社長は話す。

勢いは資金調達にも表れる。17年12月20日、カーボンはGEベンチャーズやJSRなどからの2億ドル(約225億円)の資金調達を公表。創業以降の合計調達額は4億ドルに迫る。100社近くある3Dプリンター関連スタートアップの13~17年の調達額全体が17億ドルなので、カーボンの存在感の大きさが分かる。

実は、ここ数年の同業界のスタートアップ投資はカーボンと、マサチューセッツ工科大学の教授らが15年に設立した金属3Dプリンターのデスクトップメタル(調達額は2億1200万ドル)に集中している。グーグルやゼネラル・エレクトリック(GE)系のファンド、BMWグループは両社に資金を投じており、まさに「2トップ」だ。

ブーム時に雨後の竹の子のように生まれた企業の多くが淘汰されるなかで、2トップが投資家を引き付けるのはなぜか。

「今までの3Dプリンターは期待外れだった。遅すぎて、高すぎた。僕らは『生産』に使えるスピードを追求した」(カーボンのケリー副社長)

3Dプリンターは1980年代に誕生し、90年代から自動車メーカーなどの試作現場で脈々と使われてきた。12~14年ごろのブームは主要技術の特許切れでコストが安くなったためで、価格も精度も下げたおもちゃのような家庭用3Dプリンターが登場した。

米3Dシステムズや米ストラタシスなど業務用に強い先行メーカーも注目を集めた。しかし樹脂を一層一層重ねて造形する従来型の3Dプリンターは、1つの部品を作るのに数時間かかる。これまでの用途は試作の域を出ていなかった。

そこでカーボンはあらゆる要素を作り直した。まずは素材と機械。液状の樹脂に光を当てて連続的に固めていく機構と、紫外光で固まりやすい素材を開発した。化学者だったジョセフ・デシモネ最高経営責任者(CEO)の得意分野だ。

加えて「最新の『道具』を徹底的に使いこなしている」(ケリー氏)。3Dプリンターを動かすソフトを作る際に、クラウド経由で利用できる機械学習や解析のツールをあますことなく利用。「強度に応じてスピードを変えるなど、化学反応をソフトで制御している」(ケリー氏)。しかもソフトは最低でも6週に1度はアップデートする。

また機械本体を売るのではなく、年5万ドルの使用料(材料代は別)を得るビジネスモデルを採用している。「幸運にも、まだ契約を打ち切りたいという話は1件もないよ」とケリー氏は笑う。

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