2018年7月19日(木)

iPhone速度抑制、世界に波紋 仏で予備捜査

2018/1/14 0:43
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 米アップルがスマートフォン「iPhone」旧機種の動作速度を意図的に遅くしていた問題の波紋が世界に広がってきた。フランス検察当局が詐欺などの疑いで予備的な捜査を始めたほか、「本来は必要のない買い替えを促された」として韓国やイスラエルでも集団訴訟の動きが出ている。アップルはこの意図を否定してバッテリー交換の値下げで火消しに動いているが、判断は世界の司法の場に委ねられる。

 フランスの検察当局は今年に入り、予備的な捜査を始めた。詳細は明らかでないが、事情聴取のためにアップル関係者の出頭を求めたり、同意のもとで家宅捜索も実施したりできる。捜査を打ち切ることもあれば起訴に発展することもある。

 検察当局はアップルが旧機種の動きを遅くし、新機種への買い替えを不正に促した疑いがあるとみている。こうした行為はフランスで2015年に施行された「計画的な老朽化」を取り締まる新法で、禁錮2年などの刑事罰の対象となった。

 同法は仏政府がエネルギー消費削減策の一環として打ち出した。不必要な買い替えは廃棄物の処理などで無駄なエネルギー消費につながるという考えで明確に刑事罰を規定するのはフランスだけ。これまで新法で罰則を受けた例はない。法曹関係者や研究者などで作る民間の消費者団体が告発し、捜査につながった。

 速度抑制の問題は17年12月中旬、主に米国の技術者らが集うネット掲示板での議論で発覚。これを受けアップルが「電池の経年劣化によって起こる予期せぬシャットダウンなどを防ぐため、基本ソフト(OS)の更新により動作速度を落とす仕様にした」と認めた。

 アップルは「良かれと思って導入した」と主張している。だが速度低下を「iPhone6」など旧機種に導入し始めたのは約1年前。最初に説明をせず、速度を戻すための電池交換の選択肢も提示しなかったことで消費者には「裏切られた」という思いが広がった。

 アップルは12月28日にホームページに謝罪文を掲載。旧機種の電池交換の費用を従来の79ドルから29ドル(日本では8800円から3200円)に引き下げる対応を打ち出し、各国のアップル店舗ではすでに交換作業が始まっている。投資銀行のバークレイズは「アップルは電池交換の施策によって18年の販売台数が1600万台減る懸念があるが、PR対応としては良い動きだ」と指摘する。

 日本でも直営のアップルストアや家電量販店などで電池交換の受け付けを始めている。米アップルは「当初の電池の供給量に限りがある」としている。店舗や機種によるが受け付けから交換までに時間がかかることが多い。都内のアップルストアは「iPhone7」で2週間待ちという。交換対応は12月まで続け、混乱はないもようだ。

 ただ、アップルの対応に納得した消費者ばかりではない。韓国聯合ニュースによると、消費者ら122人が米本社と韓国法人を相手取り、ソウル中央地裁に損害賠償を求めたことを11日に明らかにした。市民団体は今後さらに参加者が増えるとしている。

 イスラエルの現地紙によると、テルアビブでも17年12月、1億2500万ドル(約139億円)の損害賠償をアップルに求める集団訴訟が起きた。米国でも複数の集団訴訟が起きており、米メディアによると、直近の訴訟件数は30件を上回っている。(パリ=白石透冴、シリコンバレー=佐藤浩実)

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