2018年10月22日(月)

宝塚花組、新作「ポーの一族」 吸血鬼の少年 妖しく(もっと関西)
カルチャー

コラム(地域)
2018/1/12 17:00
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宝塚歌劇団花組が新作ミュージカル「ポーの一族」を宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)で、2月5日まで上演中だ。原作は約40年前に萩尾望都が発表した人気少女漫画で、永遠に年をとらないバンパネラ(吸血鬼)の少年エドガーが時空を超えて旅する物語。連載当時から現在まで熱狂的なファンが多いが、舞台化は初めて。独特の世界観をどのように表現するのか。

エドガーを演じる明日海りお(右)と、アランを演じる柚香光(兵庫県宝塚市)

エドガーを演じる明日海りお(右)と、アランを演じる柚香光(兵庫県宝塚市)

「人に生まれて 人ではなくなり 愛の在り処(か)を見失った――」

トップスターの明日海(あすみ)りお演じるエドガーが銀橋で歌うソロ。栗色の巻き毛に青い瞳、憂いがかった表情は漫画のエドガーそのものだ。原作で14歳の設定を宝塚の女優が演じるのは無理があるのではと懸念されたが、年齢を感じさせない妖しい雰囲気を醸し出す。演出の小池修一郎は少年らしさを出そうという指導は特にしなかったという。「エドガーは外見は少年だけれど何百年も生きている仙人のようなところがある。明日海には時間を超越していると感じさせる魅力がある」と評する。

■原作漫画に衝撃

小池は1977年、宝塚に入団した当時から「ポーの一族」の舞台化を夢見ていたという。学生時代に同級生の勧めで原作を読み「過去へのSFのようなストーリー、美しい絵、すべてが衝撃だった」(小池)。30年ほど前、都内のホテルのカフェでたまたま萩尾と隣り合わせた際に「いつか劇化させてほしい」と申し出たものの、実現できないまま時が過ぎた。主役が少年であることや、吸血鬼という負の存在が宝塚の特色と折り合わなかったからだ。

だが、今回の明日海をみて「何十年も待ったかいがあった」と小池。舞台を見た萩尾も「作品から抜け出てきたみたい」と太鼓判を押す。「常に原作を見直しながら、表情や顔の角度を研究した」という明日海の役作りは功を奏したといえそうだ。

ポーツネル男爵夫人を演じる仙名彩世(中央左)

ポーツネル男爵夫人を演じる仙名彩世(中央左)

コミックス全5巻の原作シリーズの中から、エドガーが孤独な少年アランと出会い、旅の道連れとしてバンパネラの仲間に加えるまでを描いた短編「ポーの一族」を中心に脚本を構成。エドガーがバンパネラになったいきさつや、最愛の妹メリーベル、養父母ポーツネル男爵夫妻との関係を描くため「ポーの村」や「メリーベルと銀のばら」などの要素も盛り込んだ。

■200年の物語凝縮

背景説明のために必要とはいえ、時間軸にして200年あまりの物語を2時間半の舞台に凝縮したのはやや駆け足の感じ。原作を知らない観客には分かりにくいかもしれない。

副主人公のアラン役は男役の成長株、柚香光(ゆずかれい)を抜てき。資産家の跡取り息子という恵まれた環境にありながら、信頼できる友人や家族がいない少年の孤独さをナイーブな演技で造形。明日海と並んだビジュアルのバランスもいい。一方、娘役トップの仙名彩世(せんなあやせ)はエドガーと年の近い養母、ポーツネル男爵夫人役。エドガーが憧れを抱く存在だが、2人の絡みは少ない。今作では主人公の相手役となる適当な女性の役がないとはいえ、物足りなさを感じるかもしれない。

「セリフや歌詞は極力、原作のまま舞台にのせるよう構成した」と小池。原作にはマザーグースの引用など詩的な言葉が多くちりばめられ、幻想的な作品世界を造形している。18~19世紀のヨーロッパという舞台は宝塚の得意とするところ。「すべての人の期待通りではないかもしれないが、今の私たちのベストを尽くした」(小池)というように、細部にわたるまで原作への敬意が感じられる。

(大阪・文化担当 小国由美子)

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