/

看板選手の米挑戦、日本球界に大きなメリット

2018年は日本ハムからポスティングシステムでエンゼルスに入団した大谷翔平選手(23)をはじめ、日本選手の米大リーグ挑戦が相次ぎます。手塩にかけて育てた主力が海外へ流出するのは、戦力や興行の観点で見れば球団の大きな損失でしょう。ですが、国内のプレーヤーの士気を高め、野球人気の回復にもつながる効果は見逃せません。長期的な視点では、日本球界の発展に多くのメリットをもたらしてくれると信じています。

外野手としてスタメン出場も

大リーグでも投打の二刀流に挑む大谷選手は、国内にいたときよりも打者での出場機会が増えると予想され、投手としてはもちろん、打者でも注目の高さを裏切らない数字を残してくれるのではないかと期待しています。

日本球界では1軍登録される最大28人のうち、実際に試合に出場できるのは25人まで。登板予定のない先発投手ら3人は「上がり」と呼ばれてベンチを外れます。ですが、大リーグでは公式戦に出場できる選手枠は25人と限られていて、毎試合、25人全員がベンチに入ります。大リーグでは本塁打を打てる代打は非常に重宝されるので、大谷選手は指名打者でのスタメンに加え、登板の前日や翌日にも常に「何かあったら代打で」というスタンスで起用されるのではないでしょうか。外野手としてスタメン出場というのも可能性があると思います。

試合数の多さや移動距離の長さがあり、大リーグではより強靱(きょうじん)な肉体が求められます。中4日で回っている各球団のエース級の中には、疲労のたまる夏場には、登板と登板の合間のブルペン投球を一切やらずにマウンドに上がる投手もいます。二刀流で疲労の蓄積も大きいだけに、こうした調整法も参考になるでしょう。周囲から「無理だ、無理だ」と指摘されながら、さまざまな障壁をクリアしてきた大谷選手です。うまく適応するすべを身につけていくことでしょう。

オリックスからは海外フリーエージェント(FA)権を行使して平野佳寿投手(33)がダイヤモンドバックスに移籍します。彼の決め球であるフォークボールは、大リーグの打者が最も厄介だと考える球種です。米国ではスプリットやツーシームを操る投手は一般的。速球と球速の差があまりなく、ある程度の回転数を保ちながら沈む球には打者の目が慣れています。ところが、平野投手のようにしっかり腕を振りながら、球に回転を与えず縦に大きく落とすタイプの投手は珍しく、大リーグの打者を苦しめるでしょう。

同じくフォークの使い手である上原浩治投手は、真っすぐとフォークの2球種しか持ちませんが、フォークの落ちる方向を自在に操ることができ、さまざまな投球モーションを使い分けることで打者のタイミングをうまく外してきました。平野投手も老練な上原投手のように投球の幅をメジャーでさらに広げ、救援として輝きを放ってほしいと思っています。

イチロー選手が大リーグに移籍したときなどが最たるものですが、スター選手が日本球界を去ると「日本の野球が面白くなくなり、ファンが減る」といわれます。果たして本当にそうでしょうか。私はスターが抜けても、別の新たなスターを誕生させるだけの実力と土壌を、今のプロ野球界は持っていると感じます。

日本ハムには大谷と入れ替わりで清宮が入団した。将来有望な人材が循環する仕組みを日本球界はつくれている=共同

エースの岩隈久志投手がマリナーズへと移籍した楽天では、田中将大投手が大エースの地位を築き、その田中投手がヤンキースへと移った今は、則本昂大投手が後釜にどっかり座っています。日本ハムには大谷選手と入れ替わりで今季、スラッガーとして期待される清宮幸太郎内野手が鳴り物入りのドラフト1位で入団しました。各球団の営業や編成での努力によって、将来有望な人材が循環する仕組みを日本球界はつくれていると思います。

将来を考えれば大きなプラス

主軸である看板選手が抜けて戦力が大幅にダウンするのは短期的には大きな痛手です。ただ、プロ野球の将来を考えれば大きなプラスに働くと思います。海外で活躍する選手の姿を目にして野球に関心を持ち「日本の野球はレベルが高い」と球場まで足を運んでくれる新たなファンも出てくるでしょう。野球離れに歯止めをかけ、人気を回復させる効果も少なからず期待できます。国内の選手が「俺だってメジャーでやれる」と発奮すれば、セ・パ両リーグの戦いもさらに熱気を帯びるはずです。

メジャーに多くの選手を輩出する球団は、新入団選手にとっても魅力的です。若手が「あそこに入れば飛躍できる」とポジティブなイメージを描ける球団にすることは、チームを強化する上でも重要な要素です。

丸2年続いた本コラムも今回が最終回となります。私がワールドシリーズ制覇を経験したカージナルスなどがそうでしたが、優勝を狙える球団は「最終的には俺たちが勝つ」と当然のように思いながら野球をやっています。そうした強い組織を築くためにも、世界に羽ばたく気概と技術を備えた個のプレーヤーを育てたい。これが今の私の大目標です。肌で感じた大リーグ流のよさも現場に伝えながら、指導者の道にまい進する所存です。

(オリックス・バファローズ2軍監督 田口壮)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン