2018年12月16日(日)

アップルがオープンな動画規格に参加した3つの理由
VentureBeat

コラム(テクノロジー)
2018/1/14 6:30
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米CNETが最初に報じた通り、米アップルは4日、オープンソースでロイヤルティー不要なビデオコーデック(動画配信規格)「AV1」の開発を手掛ける業界団体「アライアンス・フォー・オープン・メディア」のウェブサイトに、いきなり創業メンバーとして登場した。4K動画のインターネット配信に不可欠なビデオコーデック「HEVC/H.265 」の代替規格を開発しようとするアライアンスの取り組みに、突然本腰を入れることにしたようだ。


「創業メンバー」と聞けば、アライアンスが設立された2015年9月から参加していたように思えるが、アライアンスでの重要性が「最高水準」にあることを示すためにこの言葉が使われているにすぎない。米フェイスブックが17年11月に参加した際にも同じ地位が与えられた。つまり、アップルが参加したのはごく最近だろう。

それにしても、アップルは昨年9月にパソコン「Mac(マック)」、(iPhoneやiPadなどの)「iOS」端末、「アップルTV」をH.265に正式に対応させたばかりなのに、なぜいまAV1のサポートに関心を持つのか。考えられる3つの理由は以下の通りだ。

■自社端末をAV1に対応させたい

動画のダウンロードやストリーミング配信サービスを提供したいなら、アップルはすぐに全てのファイルをHEVCフォーマットに符号化し、昨年9月にリリースされた最新OSを搭載している製品にストリーム配信すればよい。圧縮率が変わらない競合フォーマットに対応することに、何のメリットがあるのか。

アップルはAV1動画を同社の端末にストリーミング配信したいと望む外部開発者を支援しようとしている可能性がある。アップルにはこれを理由にアライアンスに(特に最高レベルで)参加する必要はないが、アプリケーション開発者に何らかの柔軟性をもたらすか、妥当な時期に自社の端末をコストが高いHEVC/H.265規格から移すつもりなのかもしれない。

ばかげていると思うなら、アップルが「iPhone6」でFaceTimeを使って通話できるようにするために、「6」をほんの短期間H.265に対応させ、その後H.264にひそかに移った点に目を向けてほしい。当時はHEVCのライセンスとFaceTimeを巡る係争中の訴訟のどちらに原因があるのか不明だったが、アップルが動画フォーマットのサポートをすぐに変えた例は過去にもある。

■他社の端末に動画をストリーミング配信するために必要

これは最初の理由よりも興味深い。アップルはiOS11、macOS10.13、tvOS11のリリース以降、自社端末ではHEVCに対応したストリーミング動画の再生を保証できるようになったものの、他社の端末では保証できない。HEVCのライセンス料の支払いや、米マイクロソフトが「ウィンドウズ10」にHEVCを対応させた際に見舞われた厄介なライセンス問題などへの対応に、どのメーカーも前向きというわけではないからだ。アップルが配信動画のデータ量をHEVC未対応端末でも圧縮したいなら、AV1に対応するしかない。

H.265の競合規格であるAV1は、米アマゾン・ドット・コムや米グーグル、マイクロソフトなどあらゆる企業の支援を受けており、米シスコシステムズの「Thor」やグーグルの「VP9」「VP10」、米モジラ財団の「Daala(ダーラ)」といったコーデックの仕様が組み込まれている。英アームや米インテル、米エヌビディアなどの半導体メーカーに加え、シスコシステムズ、米フェイスブック、米IBMも参加している。参加企業から判断すると、AV1がリリースされれば、有能なハードウエアを持つほぼ全てのプラットフォームがAV1のストリーミング配信に広く対応することになりそうだ。

アップルの動画配信方式の1つはダウンロードで、これは既に「iTunes」(ウィンドウズのiTunesも含む)で再生できる。もう1つはストリーミング配信だ。アップルがAV1に対応すれば、アンドロイド端末に動画をストリーミング配信できるようになる。アンドロイド端末は現在iTunesには対応していないが、音楽配信「アップルミュージック」は利用できる。アップルは有料動画配信サービスでも、音楽配信サービスと同様にアンドロイドユーザーに使ってもらえるようにしたいだろう。そのための最もスマートな手段がAV1といえる。

■AV1よりもAV2の開発を支援したい

この3番目の理由はあり得なくもないが、可能性は高くない。AV1は2年以上に及ぶ開発を経て完成間近とされており、1月中に基本的な仕様の実装が完了する見通しだ。ストリーミングメディア・ドット・コムの報道によると、AV1デコーダを搭載した製品は19年半ば~後半にも発売される。AV1の符号化には、HEVCやVP9よりもさらに高性能のプロセッサが必要になるようだ。

アップルがこれほど遅い段階で本当にAV1に参画しようとしているだけなら、何らかの技術的貢献は可能とはいえ、AV1の開発を進めるのが狙いではないだろう。近い将来に実現しそうな8K動画や60Hzの4K動画などデータ量の大きいソリューションを可能にするために、すぐにでも必要になる可能性がある後続規格「AV2」の開発支援を見据えているのではないだろうか。

■最も可能性が高いのは

アップルがアライアンス・フォー・オープン・メディアに参加したのは、3つ全てが理由だと筆者は考えている。アップルが最近、コンテンツ開発契約を締結し、H.265の導入をさらに先延ばししたのは、HEVCのライセンス料を払う気がないことの現れだと考えると、アップルがネットフリックス型の有料動画配信サービスに乗り出す可能性は極めて高いといえる。

オープンソースのビデオコーデックへの参加は、この規格が使われる可能性がある19年発売の製品にとっても、後続規格が使われることになる未来の製品にとっても賢明な判断だ。

By Jeremy Horwitz

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

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