2018年1月20日(土)

さらば高給ベテラン VRが変えるプロスポーツ経営
インテルが新技術

CES
ネット・IT
北米
2018/1/11 8:40
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 【ラスベガス=兼松雄一郎】9日に開幕した世界最大の家電見本市「CES」。基調講演で米インテルのブライアン・クルザニッチ最高経営責任者(CEO)は優れた技術を持つスポーツ選手の視点からプレーがどう見えていたのか追体験できる技術を開発したことを明らかにした。多様な状況判断の場面を、実際に試合で経験する前に再現性の高い画像を使って訓練できる。低予算球団が統計データを武器に金満球団に対抗する姿を描いた「マネーボール」の新たな形につながる可能性が高い。

インテルは登場人物ごとに視点を変えられるコンテンツの開発でパラマウントと提携した(米ラスベガス)

選手目線の画像を使い判断能力を向上させる技術がスポーツトレーニングの現場で普及しつつある(トレーニング用画像)

 インテルが開発したのは多数の視角から撮影した映像を組み合わせて立体的に再構成する技術。「レゴ」ブロックのような形で色を積み上げていき、ジオラマのデジタル版をつくるイメージだ。インテルは多数のカメラで撮影した画像を立体的に再構成するスタジオを完成させ、コンテンツの制作を始めた。

 映像を登場人物や動物などあらゆる視点から画像を再構成でき、それぞれの登場人物の視点からドラマの世界に入り込めるようになる。米映画大手パラマウントとコンテンツ開発で提携。メディア企業などとも連携し、事業化を図る。

 特に影響が大きいと見られるのがスポーツだ。ほぼ現実に近いシミュレーションで、プレー判断の精度を一段と効率的に上げられるようになるためだ。特にアメリカンフットボールのクオーターバック、サッカーのゴールキーパーのような高い経験値が求められるポジションで有効と診られる。

 実は選手視点のカメラで撮った画像の提供は続々と始まっている。米スタンフォード大発のスポーツトレーニング用VR(仮想現実)のスタートアップ企業、STRIVRの製品は同大などが採用。練習時間の長さに規制がある米大学スポーツでいつでも判断力を鍛える訓練ができるため、効果が大きいとされる。

 STRIVR創業者のデレク・ベルク氏は「プロ球団では若手選手にVRで効率的に状況判断の訓練を積ませ、給料の高いベテランと入れ替える動きが起こりつつある」と指摘する。

 プロアイスホッケーリーグのNHLではゴールキーパーのヘルメットにカメラをつけ臨場感のある映像を放送している。だが、体同士をぶつけ合うコンタクトスポーツではカメラがけがの原因になる可能性もあり、装着を嫌がる選手も少なくない。インテルの合成技術により、カメラを選手の体につけなくても当事者の選手にしか見えない景色を短期間で量産し、自在に再現できるようになる。

 「マネーボール」はメジャーリーグの低予算球団オークランド・アスレチックスが統計データを駆使して割安な選手を集め、金満球団に対抗する姿を描いた書籍だ。ブラッド・ピットさん主演で映画化もされた。だが、話題になり他球団に模倣されたことでほとんど差がつかなくなった。

 だが、インテルが発表したプレーヤー視点の立体画像データ量産システムによって経験は足りないが、身体能力やプレーの精度が高い割安な若手選手の発掘が進み、経験豊富だが高給なベテラン選手には逆風となりそうだ。多くのプロスポーツで選手年齢と給与総額の引き下げ要因につながる可能性がある。選手を育てる技術の革新でマネーボールの第2幕が始まりつつある。

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