バフェット氏、後継候補2人を取締役副会長に
バークシャーの次期トップ、投資家ではなく事業家か
【ニューヨーク=山下晃】著名投資家ウォーレン・バフェット氏(87)が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイは10日、かねて後継候補と目される2人を取締役に指名した。両氏はバークシャーのエネルギー、保険事業をそれぞれ束ねている。今回の人事で「投資の神様」の後継者としてバークシャーを率いるのは投資家ではなく事業家の可能性が高まった。
取締役会に加わるのはエネルギー部門を率いるグレッグ・アベル氏(55)と保険部門を率いるアジット・ジェイン氏(66)。両氏は取締役に就任したうえでアベル氏が非保険事業、ジェイン氏が保険事業を管掌する副会長にそれぞれ就任する。
バフェット氏の一挙手一投足が米市場で注目されているが、バークシャーは全額出資子会社を多く抱えるコングロマリット(複合事業体)企業だ。保険やエネルギー、鉄道などの事業から上がる利益が全体の約8割を占める。株式などの売買に伴う投資事業利益の存在感は低下している。
アベル氏はカナダ生まれで大学では会計学を専攻。ジェイン氏はインド出身でIBMに勤務した経験がある。どちらも株式投資家としての実績はない。バフェット氏はバークシャーのトップには「事業家としての能力が必要」と言及していた。
バークシャーの投資分野ではトッド・コームズ氏(46)とテッド・ウェスラー氏(55)がバフェット氏とともに株式事業を手がけている。バフェット氏が昨年大幅に買い増したアップル株も両氏のどちらかが先んじて投資していた。バフェット氏が大型投資を決める前に、実は両氏が投資のヒントを与えているケースが多い。
株式投資家として成功しながら一大コングロマリットを築き上げたバフェット氏。つつましやかな態度も手伝い米国で最も尊敬を集める一人だ。同氏は企業文化を守るため息子のハワード・バフェット氏(63)をバークシャーの非執行会長に就けたいと話している。ポスト・バフェット体制は「事業」責任者がトップになったうえで「株式投資」「企業文化」を別の担当者が担う3人のトロイカ体制となりそうだ。