2018年1月17日(水)

「ドライ」販売半減 アサヒ、29年ぶり1億ケース割れ
市場縮小、高級路線に賭け

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2018/1/9 23:00
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 アサヒビールは9日、主力ビール「スーパードライ」の2017年の国内販売が29年ぶりに節目の1億ケース(1ケースは大瓶20本換算)を割り込んだと発表した。消費者のビール離れが進み、00年のピークからほぼ半減した。グループの欧州ビールを相次ぎ投入するなど脱一本足・高級路線で巻き返しを図るが、大ヒット商品の穴を埋めるのは容易ではない。

アサヒビールの平野伸一社長は2018年を「ビール市場の改革元年にする」と強調した

アサヒビールの平野伸一社長は2018年を「ビール市場の改革元年にする」と強調した

 「今年をビールの改革元年にしたい」。アサヒビールの平野伸一社長は9日、都内で開いた事業方針説明会で語気を強めた。26年の酒税統一に向け今春にはビールの定義の一部変更が予定されている。使用可能になる原料を使った新製品などで攻勢をかけるという。

 だが、強気のコメントは屋台骨が揺らぎ始めていることへの危機感の裏返し。同時に発表した17年のドライの国内販売は前年より2%少ない9794万ケースに低迷した。18年にはさらに240万ケースの減少を見込む。ビールの単一ブランドで日本最大の地位を築いたドライだが、市場は毎年1%程度縮み続けている。存在感の大きさゆえに、人口減や消費者の好みの多様化といった逆風をまともに受けた格好だ。

 苦みの強い「ラガー」全盛の時代に常識を覆す辛口で支持を広げたドライ。発売3年目の89年には節目の1億ケースを突破した。早期の出荷により鮮度を追求する取り組みも奏功し、ピークの00年には1億9千万ケースの販売を記録した。その後も維持し続けた「1億ケース」は、ドライの圧倒的なブランド力の象徴だった。

 ただ、アサヒグループホールディングス(GHD)の小路明善社長は「量にはもうこだわらない」と強調、1億ケース割れにも意味はないという。これまでは膨大な販売促進費をかけてドライの販売量を死守してきた面もある。大台割れでそうした無理をする必要はなくなる。代わりに高級化にかじを切り、稼ぐ力に磨きをかける考えだ。

 その一つがアンハイザー・ブッシュ・インベブから計1兆2千億円で買収した欧州ビールの活用だ。チェコの「ピルスナーウルケル」、イタリアの「ペローニ」を新たな柱に、高級ビールの国際展開を進める。日本でも今春、これら欧州ビールを相次ぎ発売する。

 量から質への転換には投資家も期待しており、アサヒGHDの株価は9日、史上最高値を更新した。「ビールの高級路線が明確になったことが評価されている」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の角山智信氏)との声もある。

 とはいえ、看板商品の失速で母国市場の強さが損なわれれば、今後の投資資金の捻出や海外展開にも影響しかねない。量は追わないというもののビールは装置産業。費用低減のためにも、一定以上の生産規模や存在感は必要だ。

 これまでは驚異の大ヒットを遂げたドライが聖域化され、需要を共食いする新商品の展開に及び腰だったのも事実。ある幹部は「呪縛とも言えた」と明かす。落ち込みが顕著になってきた最近は、その聖域に切り込み派生商品の販売も始めたが、次を担う商品は生み出せていない。

 この日もドライの派生商品「瞬冷辛口」の本格発売を発表。冷涼感を売りに20~30代の取り込みを狙う。看板商品の存在感がまだあるうちに、反転攻勢のきっかけをつかめるか。(新沼大)

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