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カヌー選手、禁止薬物混入事件の背景にあるもの
編集委員 北川和徳

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2018/1/9 18:31
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危惧していた事態が起きてしまった。2017年のカヌー・スプリント競技の日本選手権で同年の世界選手権にも出場した男子選手がライバルとなる選手の飲み物に禁止薬物を混入させた事件が発覚した。被害選手はドーピング検査で陽性となり、潔白が証明できなければ4年の出場停止処分を受けるところだった。56年ぶりの地元開催となる20年東京五輪を目指した代表争いの過熱が前代未聞の愚行を招いたともいえる。

記者会見で頭を下げる日本カヌー連盟の古谷専務理事(左)ら=9日午後、東京都渋谷区

記者会見で頭を下げる日本カヌー連盟の古谷専務理事(左)ら=9日午後、東京都渋谷区

日本カヌー連盟や日本アンチ・ドーピング機構(JADA)によれば17年9月11日、石川県小松市で開催された日本選手権のカヤック200メートル(シングル)決勝レース前、小松正治選手(25)が置いていた飲料水のボトルに、鈴木康大選手(32)が禁止薬物の筋肉増強剤を混入させた。同レースで1位となった小松選手はそれを飲んで競技後のドーピング検査で陽性反応を示して失格となり、暫定的な資格停止処分を受けた。

「東京五輪に出るために…」

その後のカヌー連盟の調査の過程で鈴木選手が名乗り出て、薬物の混入を認めたという。鈴木選手はジュニア時代から全国レベルで活躍し、10年広州アジア大会で銅メダルなどの実績があるが、12年ロンドン、16年リオデジャネイロの両五輪へは出場していない。小松選手は14年仁川アジア大会で銅メダル。やはり16年のリオ五輪出場は果たせなかった。2人とも17年の世界選手権(チェコ)代表。鈴木選手は「東京五輪に出るためにライバルを陥れたかった」と話しているという。

倫理観が強いとされる日本のアスリートのクリーンなイメージを失墜させる残念な事件となった。救いがあるとすれば、鈴木選手が自ら非を認めて全容を明らかにしたことだろう。彼が告白しなければ、薬物を飲まされた小松選手は間違いなく4年の出場停止となり、20年東京五輪への道を断たれるのは確実だった。

海外のドーピング違反でも悪意のある第三者などに薬物を飲ませられるケースがないわけではない。というよりも、陽性反応で違反に問われた選手が弁明として使うのが「第三者に薬物を混入された」。だが、それが事実認定されて処分を免れることはほとんどない。

現在の世界反ドーピング機関(WADA)のルールでは、資格停止4年の厳しい処分となる非特定物質(競技力向上の目的以外での使用が考えられないもの)によるドーピング違反が意図的でなかったと主張する場合、潔白を立証する責任はアスリート側に課される。

つまり「私は絶対にやっていない。信じてください」と主張しても無駄。故意でないならどうやって自分の体内に薬物が入ったのかを明白にする必要がある。現実的に考えて、そのハードルは極めて高い。ほぼ不可能と言っていいだろう。もし薬物を入れられたのなら、被害者側がその犯行の瞬間の目撃者を必死で探さなければならない。たとえ運よく見つかったとしても、加害者が犯行を認めなければ捜査権もない一般人の立場で自分の潔白を証明するのは難しい。

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