2018年1月19日(金)

トヨタ、サービス業向け自動走行EV 5社と実証実験
移動・物流・物販でアマゾンや滴滴などと、20年代前半

CES
自動車・機械
北米
2018/1/9 5:33
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 【ラスベガス=工藤正晃】トヨタ自動車は8日、移動や物販、物流などの多様なサービスに使える電気自動車(EV)のコンセプト車を発表した。全長4~7メートルの自動運転車で、米アマゾン・ドット・コムや中国ライドシェア最大手の滴滴出行、マツダなど5社と共同で2020年代前半に米国で実証実験を始める。車両供給だけでなく、安全な制御や保険、決済、メンテナンスなどサービス事業の創出を目指す。

トヨタはサービス業向けの自動走行EVを発表した(8日、米ラスベガス)

トヨタはサービス業向けの自動走行EVを発表した(8日、米ラスベガス)

 「これまでの車やトラックの概念を超え、消費者への新しいモビリティサービスの価値を拡大する」。世界最大の家電見本市「CES」が9日、米ラスベガスで開幕するのに先駆け、豊田章男社長が会見で明らかにした。披露したのは全長4.8メートルのEV「e―Palette(イー・パレット)コンセプト」。エリア限定で完全自動運転ができる「レベル4」の技術を搭載する想定。まず20年の東京五輪で大会関係者の移動で実験する。

 会見で公開した映像ではイー・パレットの車が24時間稼働し、移動型の店舗になったり、物を運んだり、通勤のシェアリングカーになったりした。多様な使い道を実現するため提携済みの米ウーバーテクノロジーズ、マツダのほか、新たな提携先のアマゾン、ピザ・ハット、滴滴出行の計5社と車の仕様を開発する。

 全長が異なる3種類のタイプを用意し、ライドシェア向け、ホテル向け、店舗向けの設備を搭載できるようにする計画だ。実用化の時期は未定だが、20年代前半に実証実験し、普及に向けたビジネスモデルの確立を目指す。

 EVのほか、中距離向けにはマツダの技術を生かし「レンジエクステンダー」と呼ばれる発電専用エンジンを積んだプラグインハイブリッド車(PHV)の供給も検討する。ウーバーや滴滴はそれぞれ自動運転技術を開発しているが、トヨタはイー・パレットの車両制御のインターフェースを開示し、協業企業がそれぞれの自動運転技術を活用できるようにする。

8日、CES開幕に先立ち自動運転車について発表する豊田章男社長(ラスベガス)=ロイター

8日、CES開幕に先立ち自動運転車について発表する豊田章男社長(ラスベガス)=ロイター

 初めてCESの会見に登壇し、豊田社長自らがビジョンを語った背景には従来のビジネスモデルに依存することへの懸念がある。トヨタは17年のグループ全体の世界販売台数が16年比2%増の1035万台となり、3年ぶりに過去最高を更新した。だが13年以降は横ばい傾向で「車が保有から利用にシフトする中で、生産規模をどんどん増やす時代ではない」(トヨタ幹部)。自動車業界ではコネクテッドカー(つながる車)、自動運転、カーシェアリング、電動化の英語の頭文字を組み合わせた「CASE」と呼ぶ変革が起きている。

 新たな技術を生かした使い道を提案できなければ、顧客との接点やデータは米グーグルやシェアリング企業などに偏る。イー・パレットは車両供給だけでなく、保険や決済、ソフトウエアの更新、サイバーセキュリティーなどの基盤を提供し「顧客との接点を確保し、総合リースサービスとして収益を確保する」(トヨタ幹部)狙いがある。

 トヨタの17年3月期の連結売上高は約27兆6000億円で、このうち9割強を自動車事業が占めた。残りは金融事業や住宅、通信事業の収益だが、車両や部品の製造が大半を占めて「サービス事業の創出が大事」(友山茂樹副社長)という。

 欧州勢やIT(情報技術)企業はソフトウエアを使う感覚で、車や電車、バスなど複数の移動手段を組み合わせるサービス「MaaS(マース)」で具体的な取り組みを始めている。独ダイムラーは08年から始めたカーシェアリングで、欧米を中心に世界約30都市で、1万4000台以上の車を運用する。17年秋には都市部で自動運転のEVによるカーシェアリング事業への準備を表明し、グループ全体で1700万人のシェアリングの会員を抱える。車や鉄道、バスなど複数の移動をサービスとして組み合わせる企業も買収した。

 ソフトバンクは滴滴出行、グラブ、インドのオラ、ウーバーなどの世界各地のライドシェア大手に次々と出資。人や物の移動にかかわるデータを得て、新しいサービスを創業する競争は激しさを増す。

 PwCコンサルティングは30年までに移動距離の最大37%はカーシェアリングや自動運転車、相乗りサービスなど新しい移動手段が占めると予測する。マースの市場規模は米国、欧州、中国の3地域で30年までに1兆5000億ドルに達し、年間成長率は24%に上ると推定する。

 トヨタはイー・パレットで異業種との協業を広げて、人や物の移動サービスの基盤を構築したい考えだ。だが協業相手も競合相手も、経営判断や実証実験の早いIT(情報技術)、ベンチャー企業が増える。基盤の利用が広がるかどうかは「競争相手やルールが大きく変わる。スピードとオープンさが大事」(豊田社長)という言葉の実行力にかかっている。

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