2019年5月24日(金)

減反廃止 長野の生産者、品質磨き商機に
芽吹く信州米(上)

2018/1/5 0:00
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2018年はコメの生産調整(減反)廃止の最初の年。品質を示す指標「一等米比率」で日本一の信州米も競争力が問われる。気候や風土の優位性に着目した生産者は品質とブランドを磨き、販路を切り開いている。一方、さらなる米価の下落を警戒する農業関係者も多い。約半世紀続いた政策の転換に直面するコメ生産の最前線を追う。

金崎氏は「金崎さんちのお米」というブランドで年間約190トンをネットなどで販売している(飯山市)

東御市の市街地を見下ろす八重原台地。コメ生産の太陽と大地(同市)など地域の農家などがここで栽培する八重原米を「地理的表示保護制度(GI)」に登録する準備に入った。実現すればコメで初の事例になる。国内で商品価値が高まるほか輸出にも有利になる。

八重原台地では強粘土質の土壌と昼夜の寒暖差を生かして良質のコメがとれる。GI登録時には栽培の場所を他の農地などと明確に分けることが必要だが、台地であるため区切りやすい。柳沢謙太郎社長は「3月までに取得に向けためどをつけたい」と意気込む。

減反は作り過ぎを防ぎ、価格を維持するのが目的だった。18年以降は米価の決定に市場メカニズムが働きやすくなる。生産者にとって価格下落のリスクはあるが、消費者に評価されるコメを作れば値段を落とさずに拡販できる可能性もある。

コメの2指標で日本一の長野県にとって好機になり得る。ひとつは粒の整い具合や色などの外観で決まる一等米比率。もうひとつは10アールあたりからとれる収量だ。寒暖差が大きく湿気が少ない気候は、米粒に養分が集まりやすく、病気が少ない稲を育てる。信州米の強みに独自の販売手法を絡めて、固定客を持つ生産者が存在する。

「ワンコイン(500円)お試し」「おいしくなければ返品OK」――。飯山市のコメ農家、金崎隆氏のホームページには消費者の目を引く言葉が並ぶ。「金崎さんちのお米」という商品名のコメは肥料の量を絞って質を高めたのが特徴だ。直売所などに出荷せずに高級感を印象づけ、年間生産量約190トンを全て自前の販路で売る。

米価の下落に危機感を抱きながら自前で販路を開拓してきた。最初は知り合いなどへの販売から始め、口コミなどで評判が広まり、07年にネット販売を始めた。JA(農業協同組合)に卸すよりも1.5~2倍の価格で売れるため、JAに卸さず減反にも参加していない。「経営は安定している」(金崎氏)という。

木島平村の生産者らでつくる「木島平米ブランド研究会」は20年の東京五輪をにらみブランド力の向上を狙う。五輪の前後をめどに農業生産工程管理(GAP)の認証を取得するのが目標だ。選手村で使う食材にはGAPの認証が必要で、五輪後には「認証を得ていることが(一般消費者の市場でも)標準になる」(研究会の事務局を務める村産業企画室)と読む。

17年には日本最大の品評会「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」の国際総合部門で5年連続で金賞を獲得した。村産米の輸出を検討しており、GAP取得を契機に世界に打って出る考えだ。

日本の1人あたりコメ消費量はピークだった1960年代前半の半分以下。一方で、高品質のコメを求める顧客が国内外に存在するのも事実だ。生産者の意欲次第で信州米に新たなマーケットが開ける可能性もある。

●コメ、県内農産品の生産額で首位

農業では果物や野菜のイメージが強い長野県だが、単品の生産額ではコメが最も多い。

農林水産省の「2016年農業産出額」によると、長野県のコメ産出額は454億円で全産品合計の2割弱を占めている。果物の2枚看板ともいえるリンゴ(269億円)とブドウ(162億円)の合計を上回る規模だ。

都道府県別のコメの産出額順位では12位に位置する。首位の新潟県(1484億円)の3割程度で兵庫県や富山県とほぼ肩を並べる。

良質なコメがとれることを示す「一等米比率」は10年以上、全国1位か2位を維持している。17年産米は全国平均の82.6%を大きく上回る96.3%(17年11月時点)。10アールあたり収量も上位を続けており、17年産米は629キログラム(全国平均は534キログラム)だった。(北川開)

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