北朝鮮が南北連絡チャンネル再開 約2年ぶり開通
五輪参加を協議 主導権握る狙いか
【ソウル=山田健一】韓国統一省は3日、北朝鮮と交信する板門店の「南北連絡チャンネル」が再開したと明らかにした。再開は約2年ぶり。北朝鮮はこれに先立ち連絡チャンネルを復旧させ、韓国・平昌冬季五輪への参加問題を協議すると発表した。実務的には南北会談の実現に近づいた一方、韓国を対話に引き込んで交渉の主導権を握る思惑も透ける。
北朝鮮は南北問題を扱う祖国平和統一委員会の李善権(リ・ソングォン)委員長が3日、国営メディアを通じ「金正恩(キム・ジョンウン)委員長の指示により、板門店の連絡チャンネルを開通させる」と表明。韓国側は同日午後3時半ごろに電話を受け北朝鮮側と通話できるのを確認した。
韓国統一省によると、電話やファクスが正常に使えることを確認。再開後初の通話では南北の担当者が互いに名前を呼び合った。通話時間は約20分だった。この日は回線接続を確認した程度で具体的な協議はなかったとみられる。韓国大統領府は3日、「チャンネルの復活は意味が大きい。常時、対話できる仕組みができる」と評価した。
連絡チャンネルは、南北軍事境界線の共同警備区域にある板門店の33回線を含め合計で42回線ある。南北で軍事的緊張が高まった際、双方が落としどころを探る手段として使われてきた。これまで遮断と復旧を繰り返しており、南北経済協力事業、開城工業団地の稼働停止が決まった2016年2月には北朝鮮が遮断した。韓国側では南北間の偶発的な衝突を懸念する声があった。
北朝鮮側の李氏によると、正恩氏は五輪に代表団を派遣する用意があるとした自身の1日の「新年の辞」を歓迎した文在寅(ムン・ジェイン)大統領の対応を評価。韓国と誠実に実務作業を進めるよう担当部署に命じたという。9日の南北対談を提案した2日の韓国政府の動きに迅速に応じ、対話の機運を高める狙いとみられる。
聯合ニュースによると北朝鮮の国営メディアは3日、就任後初めて大統領の肩書をつけて文氏を呼称した。これまでは「南朝鮮の執権者」などとぼかして呼んでいた。
一方で、北朝鮮には協議の主導権を握ろうとする狙いもうかがえる。李氏は韓国側の会談提案を巡り「五輪の代表団派遣に関する実務問題を議論する」と強調。その上で「南北関係の改善問題が解決されるかどうかは、南北が問題を責任をもって扱うかにかかっている」と指摘した。
会談が実現すれば、新年の辞で言及した米韓合同軍事演習の中止を直接要請する可能性もある。昨年の対話拒否から一転し揺さぶりをかける北朝鮮への文氏の対応次第では、日米韓連携に影を落とす恐れがある。

金正恩(キム・ジョンウン)総書記のもと、ミサイル発射や核開発などをすすめる北朝鮮。日本・アメリカ・韓国との対立など北朝鮮問題に関する最新のニュースをお届けします。