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アパート建設熱、冷める 貸家着工6カ月連続減

急増したアパート建設に歯止めがかかり、家賃下落や空室増への懸念が強まってきた。国土交通省が27日発表した11月の貸家着工戸数は6カ月連続で前年同月の実績を下回った。金融庁の監視強化で地銀の積極融資が止まり、相続税の節税対策も一巡。過剰供給が住宅市況を揺さぶる。

11月の貸家着工は前年同月比2.9%減の3万7508戸。相続対策と日銀のマイナス金利導入を受けて急増したアパート建設。5月まで19カ月連続のプラスを記録したが一転、マイナス基調が定着した。貸家減で全体の新設住宅着工戸数も5カ月連続のマイナスだ。

国交省の建設経済統計調査室は「個人向けアパートローンの減少が着工に影響した。都市部の需要は底堅いが、地方は下がっている」とする。

貸家着工は26都道府県でマイナスとなり、山口県の62%減が最も大きな減少幅だ。ある不動産大手サイトによると、山口市内の賃貸住宅の空室率は18%弱。10%前後の東京都区部より高い。地方では好立地が少なくなって着工が減り、将来の空室懸念も強まっている。

金融庁の監督強化で地銀が貸し出しを抑え、「不動産業者が融資案件を持ち込む先が、銀行から信用金庫に広がっている」(同庁幹部)という。だが、金融機関が地主に融資を提案しても、先行き不安から成約しないケースは増えている。

全国地方銀行協会の佐久間英利会長(千葉銀行頭取)は11月の記者会見で「地価が上がり採算のとれる物件が少なくなった。現在の地価をピークと考える人も多い」と指摘。アパート融資は限界が近いとの認識を示す。

業者の影響も大きい。レオパレス21の4~9月期の受注高は前期比14.5%減の378億円。同社幹部は「受注環境は厳しい」と話す。都市部は一定の需要が見込めるが、競合は厳しい。地方の受注を絞ると、大幅な受注減に見舞われた。

貸家着工の抑制はどこまで続くか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの試算では、2018年1~3月期から四半期ベース(前年同期比)の減少率は3期連続で8%以上になる。同社の土志田るり子氏は「相続税対策のアパート需要が減り始め、資材価格も上昇した。貸家の動向によっては全体の住宅着工を押し下げる」とみる。

契約を巡るトラブルも増えそうだ。2月にできた「サブリース問題解決センター」(東京・中央)には30件を超す相談が持ち込まれている。

神奈川県の60代男性は、不動産業者から35年にわたり1部屋7万5千円の家賃収入が見込めると持ちかけられ、5億円を借りた。ところが、今の家賃相場は5万円。大谷昭二センター長は「家賃は将来下がる可能性が高く、被害が広がる可能性がある」とみる。

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