2019年6月27日(木)

守・破・離への道(岡田武史)

フォローする

クラブ経営 課題に直面 実り多き節目の1年

(1/3ページ)
2017/12/31 6:30
保存
共有
印刷
その他

2017年が終わろうとしている。愛媛のFC今治のオーナーになって3シーズン目の今年、ターゲットにしていたJリーグ3部(J3)昇格は果たせなかった。それでも、新スタジアムの開場や自分自身にいろいろな気づきがあって、実りの多い1年だったと思っている。

FC今治のオーナー業に加えて、日本サッカー協会副会長としていろいろやらなければいけないこともあり、体がいくつあっても足りない、目の回るような1年だった。そして足元のクラブ経営に関していろいろな課題に直面した1年でもあった。

クラブ経営に関していろいろな課題に直面した1年でもあった

クラブ経営に関していろいろな課題に直面した1年でもあった

自分は何のためにこの事業に…

FC今治をスタートアップ企業になぞらえた場合、創業からちょうど3年目くらいにやってくる分岐点に、われわれもぶつかったような気がする。

所帯は小さくても夢をいっぱい抱えたスタート地点から四国リーグ、JFL(日本フットボールリーグ)とステップアップし、3部とはいえ、Jリーグ昇格に挑戦できる位置まできた。それにつれて事業の範囲が広がり、私ひとりの手に余るようなさまざまな現実にぶつかるようになった。そこで個人商店的な従来のやり方に固執してクラブをダメにしてしまうのか、それとも企業らしい内実を伴った組織に転換して次の段階に進めるのか。そういう瀬戸際というか、節目の1年だったように思う。

葛藤を抱えたのは私自身もそうだった。利益が出るか出ないかで経営判断をすればいいベンチャー企業と違って、FC今治はスポーツを通じた地域振興という私の「思い」が核にある。クラブで働くのは、そんな私への共感や「岡田さんとなら何か面白いことができそうだ」と思って集まってくれた者がほとんどだ。

しかし、スタートアップから3年目の今年、組織を構成する一人ひとりに、どうも元気がないと感じることが増えた。自分が先頭に立って死に物狂いで働かないと、生まれたてのほやほやのクラブなんか簡単につぶれてしまうという危機感が自分には常にあり、その危機感を伝えること、共有することに必死になって、自分と同じように周りを厳しく追い込んできたことは確かだ。

理念先行型の組織にありがちな、私が外向きに熱く語る理想論がある一方で、ふと組織内に目を向けると、仕事に疲弊したスタッフがいる。地域で暮らす人々をスポーツで幸せにしたいと願いながら、その人々に含まれるはずの自分の部下たちが幸せそうにみえない。そのギャップを目の当たりにして「いったい、自分は何のためにこの事業に取り組んでいるのか?」という疑問が湧き、背筋が凍るような思いをしたのだった。

FC今治はターゲットにしていたJ3昇格を果たせなかった

FC今治はターゲットにしていたJ3昇格を果たせなかった

肝心のチームの成績もJFLで伸び悩んだ。サッカーチームの監督をやっていたころから、次から次に難題が起きるたびに「これは何か意味があって起きている。私に何かを知らせようとしている」と思うようにしてきた。今回もそうだった。今のままでは立ちゆかなくなるぞという未来からの警告に思えた。

それでいろいろと変えることを試みた。最初にやったことが権限、責任の委譲だった。そもそも一人の人間の処理能力には限界というものがある。クラブの中で起きる事象のすべてに私がタッチすることは無理だとわかり、今年に関していえば、例えばトップチームの強化や選手育成については関与の度合いを大幅に減らした。

クラブ経営に関しても、稟議(りんぎ)から決裁まで私が全部に目を通して決めるシステムを変えることにした。それではいつまでたってもスタッフが仕事を我が事のように思えず、責任感が生まれもしなければ、生き生きと働くこともできないと思った。

  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

サッカーコラム

電子版トップスポーツトップ

守・破・離への道(岡田武史) 一覧

フォローする
FC今治を足場に湘南へ移籍し、今季はJ1でプレーする小野田(左)=共同共同

 人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)が生活の隅々に及ぶ未来の社会において、スポーツはいかなる価値を持つのか。今回はそんなことを読者の皆さんと一緒に考えてみたい。
 3月17日に開幕した第21回日本 …続き (5/24)

ファンやサポーターの厚情に応えるためにも、「来年こそは」と誓いを新たにした

 日本フットボールリーグ(JFL)からJリーグ3部(J3)への昇格を目指した2018年シーズン、私がオーナーを務めるFC今治は年間順位5位に終わり、目標を達成できなかった。負け惜しみととられるかもしれ …続き (2018/12/26)

攻め込むFC今治の桑島(右)。今年はJ3昇格を果たさなければならない

 私がオーナーを務めるFC今治は2年目の日本フットボールリーグ(JFL)を戦っている。3月11日に開幕したファーストステージは第10節(5月20日)を終えた時点で4位(5勝2分け3敗の勝ち点17)にい …続き (2018/5/28)

ハイライト・スポーツ

[PR]