天体観測で中山間地振興 iPSポータル社長 村山昇作さん(語る ひと・まち・産業)
香川・さぬきに望遠鏡博物館

2017/12/27 12:00
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iPS細胞の事業化支援などを手掛けるiPSポータル(京都市)の村山昇作社長(68)は日銀の高松支店長勤務が人生の転機となった。2016年3月には香川県さぬき市の山あいにある閉校された小学校に、使われなくなった天体望遠鏡を全国から集めた博物館を開き、香川と関わり続ける。

 むらやま・しょうさく 1949年京都府生まれ。同志社大経卒、72年日本銀行入行。94~96年高松支店長。調査統計局長を経て2001年に退行し、帝国製薬入社。02~11年社長。11年にiPSアカデミアジャパン社長、14年からiPSポータル社長。

むらやま・しょうさく 1949年京都府生まれ。同志社大経卒、72年日本銀行入行。94~96年高松支店長。調査統計局長を経て2001年に退行し、帝国製薬入社。02~11年社長。11年にiPSアカデミアジャパン社長、14年からiPSポータル社長。

「天体望遠鏡博物館はボランティアにより土・日曜を中心に開館している。展示する望遠鏡は当初の200台から300台に増え、17年には重さ12トンの巨大望遠鏡を譲り受けた。企業や個人の寄付で運営費用を賄う。月に一度は観測会や工作教室、専門家の講演会などを開いており、市や住民の協力もあって子供たちなどの利用が好調だ」

「天体観測の趣味は中学生から。天文台で望遠鏡をのぞかせてもらい、美しさに感激した。香川にも観測所を作りたいと考えていたが、少子化などで全国各地の学校や公共天文台の統廃合が進み、多くの天体望遠鏡が行き場を失っていることを知って博物館を思い立った。四国中を巡って現在の場所にたどり着いた」

「貴重なものもあり、できるだけ使えるようにして次世代に伝えるとともに、子供たちに科学との幸せな出会いの機会を与えたい。過疎の中山間地の再生や廃校活用のモデルにしたいという意気込みもあった。ボランティアをお願いしたお年寄りが元気になり、自治体などの見学も多い」

iPS細胞と関わることになったのも日銀の高松支店長時代の交流がきっかけだった。

日銀支店長時代に撮った写真で香川の観光ガイドも発行

日銀支店長時代に撮った写真で香川の観光ガイドも発行

「高松には1年半いたが、海がきれいで人も良く、都市機能もコンパクトにまとまっていて暮らしやすかった。地元では当たり前でも知られていない県内の魅力的な場所を外部の目線で発信したいと、天体観測とともに趣味の写真を生かして企業の支店長らと観光ガイドを作ったほどだ」

「東京で調査統計局長も務めたが、金融政策だけでは経済は良くならないとの考えを強めた。京都の実家が西陣織を商っていたため実業に興味もあった。そんな時、支店長時代に親交があった貼り薬大手の帝国製薬(東かがわ市)の創業家に経営者として誘われた。香川の企業でなければ受けてなかったかもしれない。その縁が今の仕事に結びつくのだから、禍福はあざなえる縄のごとしだ」

百十四銀行の顧問として18年に開かれる高松国際ピアノコンクールの実行委員も務め、京都と香川で二重生活を送る。

「『複住』を提唱し、実践している。大都市圏と別に地方にも生活基盤があれば、自然との触れ合いやボランティアなどで週末を充実できる。四国でも急増する空き家問題の解消にもなるので、地方に2軒目の住宅を持つ際は税金を免除していいくらいだと思う」

「このまま人口が減り続ければ香川県の労働力人口は50~70年後には計算上ゼロになる。地域経済は非常に厳しいが、これが今後も常態と考えた方が良い。不都合な現実を見据え、人口や需要の減少によるリスクシナリオを踏まえて、できるだけそうならないように四国の官民全体で早く手を打つ必要がある」

■子供呼び戻す中心拠点

《一言メモ》村山昇作さんが代表理事を務める天体望遠鏡博物館は香川県さぬき市の多和地区にある。四国八十八カ所霊場を1番札所から巡ると最終の「結願(けちがん)の寺」とされる88番札所、大窪寺のすぐ近くだ。

山間部で交通の便が悪いこともあり、高齢化と人口減が急速に進むが、博物館が置かれる小学校の閉校を機に生まれた住民組織「結願の里 多和の会」が校舎そばで農産物の直売所など集客施設を整備し、巡礼者らをもてなす。国の特区認定を得て製造・販売するどぶろくも名物だ。

博物館は子供たちを呼び戻し、にぎわいを生むためにも中心となる拠点であり、住民の地域再生への熱意が立地する1つの決め手になったという。山あいで住宅などが少ないため人工光に邪魔されないことも、天体観測には適している。

(高松支局長 真鍋正巳)

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