認知症、日常会話で検査 京都府立医大など
京都府立医科大学の大庭輝特任助教らの研究グループは、日常会話で認知機能を簡単に検査する技術を開発した。介護現場や家庭などでアルツハイマー病などの認知症患者の早期発見につながる。高齢者の会話を促進し、認知症予防も見込めると期待しており、高齢者施設などで活用を広げる考えだ。
認知症は正常に発達した精神機能が失われ、日常生活や社会生活を営めない状態を指す。認知症の早期発見・治療に役立つ検査技術が求められていた。
研究グループは高齢者見守りサービスの会話内容を分析したり認知症患者に詳しい臨床心理士との意見交換などを実施し、認知症患者の会話の特徴35項目を抽出。さらに認知症患者に関わる医師や心理士、介護士にアンケートをとって項目を絞り込んだ。最終的に認知症に特徴的な「会話に広がりがない」や「先の予定が分からない」「話が過度にそれる」など15項目のリストを作成した。

次に、医師13人、心理士10人に平均78歳の認知症高齢者計45人と会話してもらい、15項目が当てはまるかどうかをそれぞれ3段階で評価して点数化した。健康な人で実施した場合は平均1.4点だったが、認知症患者では平均13点と高かった。点数から認知症かどうかを正しく推定する精度は80~90%だった。大庭助教は「十分に臨床で使える精度だ」と評価する。
新技術は日常会話を記録するだけで、患者に不快な思いをさせなくて済む。介護現場で簡易検査を使えば、介護士と利用者の会話を活性化する効果も期待できる。大庭助教は「会話は高齢者の満足度を高め、認知機能の維持につながる」と話す。評価シートはウェブで公開しており、高齢者施設や家庭などで活用してもらう考えだ。
医療機関における一般的な認知症の検査は、患者自身の年齢や日付を聞いたり簡単な計算をさせたりして、認知機能を評価する。正解のある簡単な問いのため、患者が不快な思いをしたり不安になったりするケースが多かった。
内閣府のデータによると、2012年は65歳以上の認知症患者数が462万人で約7人に1人だった。25年には約5人に1人に増えるとされる。高齢化に伴って患者数は増加傾向だ。労働力が減るなか、介護の負担が重くなり、社会問題となっている。
(大阪経済部 岩井淳哉)
[日経産業新聞 2017年12月26日付]