2019年3月21日(木)

フジモリ氏なお強い存在感 ペルー元大統領に恩赦
次期大統領選に影響も

2017/12/25 21:00
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【サンパウロ=外山尚之】ペルー政府は24日、人権侵害などの罪で収監中のアルベルト・フジモリ元大統領(79)の恩赦を決定した。日系人初の大統領となったフジモリ氏は経済の立て直しなどでカリスマ的な人気を誇るが、強権的な統治に批判も根強く、長年にわたりペルーの国論を二分してきた。存在感はいまだに大きく、2021年の次期大統領選に向けた政治情勢に影響を与える可能性もある。

「我々の指導者が帰ってきた!」。24日夜、収監中のフジモリ氏が入院している首都リマの病院前には支援者が駆けつけ、国旗を掲げたり太鼓を打ち鳴らしたりして恩赦決定を祝った。

一方、リマなどペルー各地では恩赦に反対する反フジモリ派による集会が開かれた。同氏の大統領在任中の人権侵害を問題視する国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは「釈放は政治的交渉の結果との印象がつきまとう」と批判する声明を出した。

ハイパーインフレや左翼ゲリラによるテロがまん延する中で1990年に大統領に就任したフジモリ氏は経済の立て直しに成功。左翼ゲリラを徹底的に掃討し、治安を回復させた。退任から17年たった今も「フジモリ派」と呼ばれる強力な支持層を有する。

一方、憲法の規定を無視して3選を強行したほか、左翼ゲリラの掃討作戦では超法規的な措置も目立ち、多数の市民の犠牲者も出た。自身や側近の汚職も明らかになっており、国民の間では反フジモリ感情も根強い。

あまりにも大きすぎる功罪はこれまで国内でフジモリ派と反フジモリ派の分断を招いてきた。16年の大統領選では反フジモリ票をまとめたクチンスキ大統領が長女のケイコ氏(42)を僅差で制したものの、議会選ではフジモリ派が勝利。ケイコ氏が率いる野党はクチンスキ政権の主要閣僚や首相を次々と不信任とし、大統領に対しても罷免決議案で責め立てた。

クチンスキ大統領はかつてフジモリ氏の恩赦を否定していたが、野党の攻勢を前に方針を転換した。今回の恩赦は人道上の措置としているが、フジモリ派に対する妥協であることは明らかだ。

恩赦により一時的に与野党の対立が緩和される見込みだが、長期的には政治の安定につながるかどうかは不透明だ。フジモリ氏の表舞台への復帰で、フジモリ家の後継者問題が再燃する可能性があるためだ。

フジモリ派の代表として過去2回の大統領選に出馬したケイコ氏は21年の大統領選での勝利を目指す。しかしフジモリ氏はケイコ氏ではなく、次男で政治家、実業家として知られるケンジ氏(37)を後継者として望んでいるとされる。

恩赦問題でもケイコ氏は国民の反フジモリ感情を刺激しないためこれまで恩赦問題を積極的に取り上げなかったが、父の後押しを欲するケンジ氏は働きかけを続けてきた。これまでケイコ氏が21年、ケンジ氏が26年にそれぞれ立候補するという案が有力視されてきたが、健康問題を抱えるフジモリ氏が候補者選びに介入すれば、野党内の勢力争いが起こる可能性もある。

ペルーのメディアは後継者争いの号砲が鳴ったと伝えている。ケイコ氏は24日、ツイッターに「今日は私の家族とフジモリ派にとって素晴らしい一日だ」と書き込み、フジモリ氏の入院する病院を訪問。車の中からフジモリ派の支援者やメディアに手を振り、自らの存在感をアピールした。

一方、ケンジ氏はフジモリ氏の病室で2人が顔を寄せ合ったツーショットの動画や恩赦を知らされた瞬間の同氏の映像をツイッターに投稿。フジモリ氏との距離の近さを誇示した。

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