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スキー産業復活・強化へ 皆川賢太郎氏が描く未来

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2017/12/25 6:30
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それでも送迎の準備が整い、上客が引きも切らないのは北海道ニセコなど一部の地方だけ。言語のできるインストラクターやアジアの初心者向けのスクール不足がネックとなって、実際にスキーを楽しんだ人は訪日客の2.7%にとどまる。"需給ギャップ"を埋めるためにも「指導員の育成策を立てたり、海外から迎え入れるためのビザ緩和を国に働きかけたりするなど、SAJがやるべきことは多い」と皆川氏。時代に立ち遅れた「アナログ」な運営もスキー離れを加速させかねないと危機感を募らせる。「いまだに多くのスキー場では財布を携帯し、紙のリフト券を見せないとリフトに乗れない」。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を学ぼうと、先行するプロ野球楽天の担当者を未来会議にパネリストとして招き、10月には本拠地「Koboパーク宮城」を視察に訪れた。国内外の客足を雪山に向けられれば会員登録や公認、検定料にも跳ね返る。スキーをつかさどる団体でありながら、産業振興は民間任せになっていた慣習を改め、「SAJがすべてのプラットフォームにならないと」と皆川氏は強調する。

送迎の準備が整い、上客が引きも切らないのは北海道ニセコなど一部の地方だけに限られる

送迎の準備が整い、上客が引きも切らないのは北海道ニセコなど一部の地方だけに限られる

独自財源の確保に向けたもう一つの柱が「観(み)るスポーツ」としての発展だ。アルペンのトップ選手として世界を飛び回った皆川氏は、多くの観客を熱狂させ、テレビ放映や賞金でも興行として確立している欧州のスキー文化を肌で感じている。対してSAJの放映権収入は毎年多くて2000万円ほど、広告料は500万円にも届かない。放映権だけで億単位の金が動く野球やサッカーに比べればすずめの涙だが、五輪期間しか冬季競技への関心が向かない日本で一足飛びにいかないことはわかっている。「金を積んでワールドカップ(W杯)や世界選手権を呼んでも、国内で文化も創っていないのに好きな人しか見ない」。一歩として、昨季から全日本チームの愛称を「SNOW JAPAN」と命名し、発信した。「他の競技団体のまねごとではなく、スキーとスノーボードが同じ団体に属することすら大半の人が知らない。多種多様の競技に唯一くくれるのが『スノー』という言葉だった」。5月には選手の知名度を上げようとトップ選手を表彰する「アワード」を初めて開催し、12月に立ち上げたオンラインストアではSAJとして事実上初の商品開発となる「SNOW JAPAN」のロゴ入りTシャツなどの販売を始めた。こつこつとブランド価値を高めていく一方で、スポンサーにはスキー・スノーボード全体への支援を働きかけている真っ最中。「好きな選手や競技に単発でスポンサーがつくのではなく、これからは束になってかからないと」

マーケティング担当としての改革の一方で、競技の側からも手を打った。年末に開かれるアルペンの全日本選手権。6月に競技本部長に就いた皆川氏は、優勝者に五輪の出場内定を与えることを決めた。唐突な感もあった選考価値の付与に様々な臆測も生んだ決断は、「(競技を)知ってもらうためにも、やっている人たちに公平にチャンスがあるという透明性が大事」との考えから。言い換えれば、W杯の獲得ポイントなどを基に「内部」で決まっていた代表争いを一部で"開放"し、世間の関心事に変える狙い。五輪代表枠を競い合い、注目を集めたフィギュアスケートの全日本選手権などはその道しるべだろう。平昌五輪後を見据えて「一から見直す」という強化費の割り振りでもなたを振るい、競技人口の多さや付帯産業への波及効果、他種目へのコンバートの可能性、興行に適しているかどうかなどを総合的に判断し、「全体の『経営』の観点からサポートする概算を立てている」という。メダルの取りやすさという近視眼的な見方だけでなく、「投資(強化費)の回収」といった複眼的、長期的視野でも強化を捉える。

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