2019年8月25日(日)

在来ゴイよ琵琶湖に戻ってこい 漁業者ら調査や保護活動
関西サイエンスマガジン

2017/12/26 6:00
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「コイの滝登り」などと言われ、古くから縁起のいい魚として親しまれてきたコイ。実は国内で飼育されているコイの多くがユーラシア大陸由来の「導入型」と呼ばれる外来種だ。日本古来の在来型は限られた場所にしか生息しておらず、生態も謎だ。滋賀県の琵琶湖は希少な在来ゴイの生息場所として知られ、地元の漁業者らは実態調査や保護活動を続けている。

琵琶湖で保護された在来ゴイの子孫。光を当てると金色に輝いた(滋賀県彦根市の滋賀県水産試験場)

琵琶湖で保護された在来ゴイの子孫。光を当てると金色に輝いた(滋賀県彦根市の滋賀県水産試験場)

琵琶湖畔にある滋賀県水産試験場の池には、在来の「マゴイ」が約20匹飼育されている。卵を採取して池でふ化したマゴイだ。約10年は生きているという。人の気配を感じ取ると隠れてしまう。試験場の井出充彦さんは「(外来の)『ヤマトゴイ』と違ってとにかく警戒心が強く、エサの時にしか顔を出さないんです」と話す。

マゴイはヤマトゴイに比べて体高が低くて細長い円筒形をしている。一見するとヤマトゴイと色合いが似ており見分けがつきにくいが、光に当たるとうろこの部分が黄金色に輝くのが特徴だ。

生態はよく分かっていないが、警戒心が強く飼育が難しいとされる。水辺ではなく水深40~50メートルの深いところに生息している。琵琶湖のほかは高知県の四万十川などに生息しているというが、定かではない。環境省レッドリストで絶滅の恐れのある地域個体群に指定されている。

研究用の在来ゴイが飼われている水槽(手前)

研究用の在来ゴイが飼われている水槽(手前)

2004年にコイヘルペスウイルス病が流行した際、琵琶湖では大量にマゴイの死骸が上がった。このままではマゴイが絶滅してしまうかもしれないという危機感から地元の漁師と研究者らは共同で保護のための行動を起こした。

国立環境研究所主任研究員の馬渕浩司さんらの研究チームはまず、マゴイの生態を明らかにするため、ミトコンドリアDNAの塩基配列を解析した。琵琶湖では計856匹を調べ、その約8割が在来型の特徴を持つコイだった。生息の場所は北側が最も多く、しかも水深20メートル以上の深さでより多く生息していることが分かったという。琵琶湖での生息が多い理由として馬渕さんは「水深の深い領域が広いことが考えられる」と分析する。

外来種より細長いのが特徴

外来種より細長いのが特徴

研究チームはさらに、地元の漁師と共同で発信器をマゴイとヤマトゴイに装着して放流実験を行っている。1年あたり秋と冬の2シーズン放流する。最終的には在来型コイ6個体、導入型コイ6個体の行動データを取得する。3年間にわたる実験で行動パターンを分析して、保護につなげる。

琵琶湖で30年以上漁師をしている松岡正富さんは「コイヘルペスウイルス病が流行するまでは全域にいたし、よく網にかかっていた」と話す。今は生き残ったマゴイの子孫がひっそり生きているが、まれに網にかかる程度という。松岡さんは実験にも参加。「琵琶湖に何かを返したいという思いで保護活動を続けている」。

(文・川口健史、写真・山本博文)

 関西にはけいはんな学研都市(関西文化学術研究都市)や神戸医療産業都市、京都大学や大阪大学などのほか、大手企業の研究機関が集積する。関西の先端技術や研究を、独自の視点で切り取った写真と文章で毎月伝える。

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