2018年11月20日(火)

次世代電池 革新のパワー リチウムを超えろ

科学&新技術
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2017/12/21 6:30
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電気自動車(EV)や自然エネルギーを活用した発電に不可欠な次世代電池の開発が盛んだ。コストや性能などで従来のリチウムイオン電池を上回るパワーを秘めた材料が登場している。海外勢はガソリン車の販売を禁止する検討を始めており、とくにEVの電源に注目が集まる。電池革新の原動力になると期待される新技術の現状を追った。

水分に触れないように特殊な容器の中で作業する(東工大の菅野研究室)

水分に触れないように特殊な容器の中で作業する(東工大の菅野研究室)

「次世代電池では全固体型が最も実用化に近い」と語るのは、旭化成の吉野彰名誉フェローだ。リチウムイオン電池の生みの親の1人で、ノーベル化学賞の候補にも挙がる。そうした人物が全固体型を有望視していることは意義深い。

全固体型、EVの原動力

電池はリチウムイオンの通り道になる電解液を正極と負極で挟む。現在のリチウムイオン電池は、燃えやすい有機溶媒を使う。全固体電池は燃えにくい固体電解質に置き換えるため、安全性が向上するとされる。

全固体型への関心が高まるきっかけになったのは、2011年に東京工業大学の菅野了次教授らがトヨタ自動車などと共同で開発した新しい固体電解質だ。リチウムイオンの通りやすさを示すイオン伝導率の数値で従来の電解液を超えた。

イオンが動きやすくなると、電池の出力が高まる。EVに搭載すれば、多くの電力が必要になる発進や加速などの走行性能が向上する見込みだ。

東工大などの研究チームは、元素の種類などを変えて材料の改良を進めている。16年にはイオン伝導率が従来の電解液と比べて約2倍、出力は3倍以上になった。試作した電池は充放電を千回繰り返しても容量はほとんど落ちず、寿命も長くなってきている。

急速充電も可能になると期待を集める。だが、内部に結晶ができてショートする問題が見つかっている。従来のリチウムイオン電池と同じだ。この問題を解決できれば、数分での充電に道が開ける。

現在の固体電解質は硫黄を含み、空気中の水分に触れるとガスが発生してしまう欠点も抱える。実験室には特殊な密閉容器があり、手袋を使って内部で作業を進め、外から空気が入り込まないようにしている。材料の合成から電池の組み立てまでに注意が必要で、量産にはまだ壁がある。

解決の糸口はイオン伝導率の向上だ。吉野名誉フェローは「電解液の10倍になれば、簡単に製造できる」と指摘する。乾電池のように、粉末を混ぜるなどの簡単な工程で組み立てられるようになると見込む。

菅野教授らが17年に開発した希少金属を使わない固体電解質は、コストを3分の1に抑えたが、伝導率は液体とほぼ同じまで下がってしまった。ガスの発生を抑えるなどの改良を加えるには、元の性能を高めなければならない。

電池の容量を決める電極の選択も難しい。菅野教授は「様々な研究チームが電極に適した材料を探っている段階だ」と話す。

物質・材料研究機構の高田和典副拠点長らは、新しい負極を開発した。一般的な炭素からシリコンにすることで、負極の容量を既存のリチウムイオン電池の約10倍に高めた。電池全体の容量は5割ほど増える見込みという。酸素を混ぜるなどの工夫で、シリコンが均一に膨らむようにして電極の破壊を防いだ。

高田副拠点長は「原理は実証できたが、量産に適した技術開発が必要だ」と話す。実験では基板にシリコン膜をつける工程があり、手間がかかるという。

トヨタは2020年代前半に全固体電池の実用化を目指している。20年代半ばまでに技術的な課題を達成できれば、30年ごろにはEVへの搭載が夢でなくなる。リチウムイオン電池を超える性能を発揮できることが普及の鍵になる。

壁打ち破る「濃厚電解液」

リチウムイオン電池はソニーと旭化成などが1991年に初めて実用化した。その後の改良で性能は向上したが、限界も見え始めている。壁を打ち破ると期待される技術が固体電解質に近い性質をもつ「濃厚電解液」だ。電極を改良して性能を高める研究も進む。

通常の電解液(左)は引火するが、濃厚電解液は引火しない(東京大学山田淳夫教授提供)

通常の電解液(左)は引火するが、濃厚電解液は引火しない(東京大学山田淳夫教授提供)

横浜国立大学の渡辺正義教授は「電解液を濃くすることで、固体に近い性質になった」と語る。固体のように揮発せず、燃えにくい特徴があり、安全な電池につながるためだ。渡辺教授らはこれまでに比べてリチウムイオンの濃度を3倍にした電解液を開発した。

通常の電解液では、一部の有機溶媒の分子だけがリチウムイオンに結合していた。結合していない自由な分子は、電解液を離れて気体中に飛び出し、揮発しやすい。充電と放電を繰り返すうちに電子などとも反応して、電解液や電極などが劣化する原因にもなる。

注目したのは「グライム」と呼ぶ種類の有機溶媒で、リチウムイオンを取り囲む性質がある。混ぜる割合を工夫することで、グライムのほぼ全ての分子がリチウムイオンに結合する条件を見つけた。電極などの劣化を抑えて、長寿命の電池ができると見込む。

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