浜辺美波 「キミスイ」ヒットで10代最注目の女優に
2017年夏に公開された主演映画『君の膵臓をたべたい』が大ヒットし、10代で最も注目を集める女優の1人となった浜辺美波。CMやミュージックビデオへも起用が相次いだ17歳は、今年もジャンルを超えて引っ張りだことなりそうだ。「失敗を恐れず、いろんな挑戦をしていきたい」と意気込みを語る。

11年の「東宝シンデレラ」オーディションで入賞。現場経験を積み、15年のドラマ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』でヒロインに抜てきされた。翌16年には、人気マンガを実写化した『咲‐Saki‐』で連ドラ初主演。そして17年7月に公開されたのが、住野よるのベストセラー小説を、北村匠海とのダブル主演で映画化した『君の膵臓をたべたい』(キミスイ)だ。浜辺は重病と闘いながら命を輝かせるヒロイン・山内桜良を演じ、新人女優の主演作としては異例の興行収入34億円超えとなった。
「『君の膵臓をたべたい』は、たくさんの方に見ていただけたことを実感した作品でした。私も普通に映画館に見に行ったんですけど、劇場内は人がいっぱいで、映画が始まると、両脇の方が泣いてくださっていて。私も一緒になって、泣きながら見ていました(笑)。
そのあとフードコートでご飯を食べたら、同じ回で見た方が隣に座っていて。『桜良ちゃん、良かったね』『私たちも毎日を大切にしようね』と感想を話されていて。しっかり感想を聞くことができて、うれしかったです。
キミスイで私が一番大切にしたのは、笑顔でした。太陽のように明るく人を照らすような、人柄や考え方がにじみ出るような笑顔にしたいなと思って、撮影が押すくらい、何度も、何パターンもやらせていただいたんです。桜良ちゃんを演じることで、私自身も笑顔の力に気づいたり、明るくなれたり。私生活でも生き生きと、表情豊かになれたような気がします」
日経エンタテインメント!誌では『君の膵臓~』公開前の5月にもインタビューを行った。当時の彼女はまだ取材に不慣れなこともあり、自信なさげに話す姿が印象に残った。しかし今回は、別人のように明るく快活に話す。
「こういう場は今でも得意ではないし、本当は体の半分は緊張しています。でも、キミスイの宣伝でたくさんテレビやラジオに出たり、キャンペーンで全国を回ったりしたので、少しはマシになったかなと(笑)。作品を背負っているからこそ、しっかりしなきゃという気持ちも強くありました。
それから、キミスイは声を褒めていただくことが多くて。声は、ずっと変わることがないもの。自分の安心材料というか、1つの自信につながりました」
写真集も異例の人気
『君の膵臓~』公開後の8月に発売された2nd写真集『voyage』は、予想を超える予約で、発売前に重版が決定。水着なしの写真集では異例のヒットとなった。続く9月には、『君の膵臓~』と同じ東宝のアクション大作『亜人』が公開。主人公の妹役を演じて、佐藤健や川栄李奈らと共演した。
「写真集は、初めて海外に行って、台湾で撮影しました。2年前の1st写真集(『瞬間』)ではだいたい真顔で表情のバリエーションが少なかったんですけど、今回はクシャッと笑った表情もあったりして。写真集も含めて、表情が豊かになった自分を感じました。
『亜人』は、キャラクター自体が原作マンガと大きく変わっていたので、毎カット必死に考えながら演じていました。刺激を受けたのは、川栄さんのアクション。日々鍛えていると動きが違うんだろうなと思って、『どうやって運動してるんですか?』と聞いてみたんです。そうしたら、川栄さんは駅から駅まで歩いたりするらしくて、『まずは歩こう!』と(笑)。それで私も、エレベーターを使わず階段を使うようにしたり……しなかったり。最近サボり気味ですが、ちょっとずつ、小さな一歩から始めたいと思っています」
17年のブレイクを予見し、起用が相次いだのがCMだ。4月からは三井不動産「ららぽーと」、6月には日清食品「カップヌードル」のCMに起用され、『魔女の宅急便』のキキの声を演じて話題に。
10月には、オリコン週間チャート初登場2位となったAimerの『花の唄』のミュージックビデオ(MV)に出演。『アオハライド』などの映画監督・三木孝浩とのタッグ作として注目を集めた。
「私は本を読むのが好きで、キミスイでもナレーションは楽しくできたんです。でも声優のお仕事は、声の出し方から全然違う。カップヌードルのCMでは思うように声が出なくて、何度も録り直しました。機会があれば、次はもっと上手にできるように頑張りたいです。
AimerさんのMVは、普段と違ってセリフがなかったのですが、表情に集中することができました。自分でも『こんな表情もするんだ』と驚いたりしましたね。CMやMVの経験も、いつか絶対に女優業に役立つだろうなと思っています」
10代で映画やドラマの主演を張れる女優のなかで、18年も高校生なのは、現在高校2年生の浜辺が筆頭といえる存在になる。ヒットの実績があり、なおかつ、リアルに女子高生を演じられる貴重な存在として、引く手あまたとなりそうだ。
「目標は、女優を続けていくことです。役柄に寄り添って、思いや願いをくみ取りながら演じられる女優さんになりたい。それから今は、失敗をしたいなと思っていて。キミスイで共演した小栗(旬)さんから『失敗してもいいんだよ』と言っていただいて、その言葉が私には大きかったんです。なので、失敗を恐れず。小さなことから少しずつでも、いろんな挑戦をしていきたいです」
(ライター 泊貴洋)
[日経エンタテインメント! 2018年1月号の記事を再構成]
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