2018年1月19日(金)

「自ら学ぶコンピューター」時代の不安と期待
VentureBeat

コラム(テクノロジー)
AI
2017/12/23 6:30
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 私たちは長い間人工知能(AI)について気をもみ、心配してきたため、AI時代が到来しても歓迎するのを忘れていた。

 IT(情報技術)大手は今や、年に一度の基調講演で「機械学習」などのフレーズを盛り込まざるを得なくなっている。だがこれは一体何なのか。自己学習ソフトウエアの主な特徴にはことごとく重大な欠点もあるようだと不安をかき立てるべきなのか。

 未来はついに到来した。これは刺激的だが、怖くもある。新たな技術を自力で習得できるコンピュータープログラムが当たり前になれば、未来はどう変わるのか。どんな点を心配すべきなのか。

(C)agsandrew/Shutterstock

(C)agsandrew/Shutterstock

■ビジネス用と家庭用の自己学習ソフト

 2018年が迫り、ビジネス用ソフトと家庭用ソフトのどちらの分野も今後数年間にわたる本格的なAI開発競争期へ突入しようとしている。家庭用ソフトでは、機械学習やAIが暮らしのちょっとしたことを楽にしてくれている。多くの人がAIスピーカー「アマゾンエコー」や「グーグルホーム」をキッチンカウンターに置いているのはその好例だ。

 こうした用途は有用で面白くはあるが、その自己学習能力は控えめに言っても限定的だ。

 一方、業務分野における自己学習ソフトにはもっと直接的な効果がある。

 「私たちは情報に溺れている」。業務プロセスの自動化を手掛けるカナダのアートシル・テクノロジーズのビータ・ワシリエワ氏はこう話す。「業務プロセスの最大の弱点は書類の処理と、こうした書類からの手作業でのデータ入力だ。構造化されていない内容を構造化データに変えるのが弱点の本質だ」と指摘する。

 とはいえ、業務用と家庭用のどちらにも明確なニーズと果たすべき役割がある。どちらの分野の機械学習もより高度で有能になるだろう。

 自己学習ソフトの3つの主な用途は以下の通りだ。

1.スマートフォン(スマホ) 機械学習により、スマホは正真正銘のスーパーコンピューターになっている。写真に写っている人の顔を認識したり、よりタイムリーで関連性の高いアプリや位置を提案したりするなど、スマホは人物を認識し、私たちが何を望んでいるかを習得しつつある。

 さらに重要なことに、機械学習はスマホをマルウエアやウイルスなど既知の脅威を検知し、締め出せるよう訓練している。楽しい機能だけを強化しているわけではないのだ。

2.医療 医療診断は難しい分野だ。一部のタイプのガンの解析では、治療方針を検討し合意するまでに4人の専門家の意見が必要になる。

 機械学習を使えば、医師はこうした診断をもっと迅速かつ正確に、少ない労力で実施できるようになる。

3.マーケティングと業務管理 自己学習ソフトをマーケティングに使えば、機械学習の有望性とプライバシーへの懸念のどちらにも対応できる。

 10年以内には、どんな小さな会社でも広告の到達率を向上させるために機械学習を使うようになると予測する専門家もいる。

 記帳や書類の整理を容易にするのも重要な用途だ。書類やデータを保存する新たなソフトは、ユーザーから手がかりを得て書類や取引の種類を自動的に見極め、分類するのに適している。これにより、整理された状態や収益性を維持するための労力やコストを大幅に減らせる。

 もちろん、これは機械学習が示す新たなチャンスの一例だ。将来的にはほとんど全ての企業が業務を効率化するために自己学習ソフトを使うようになるだろう。

■AI活用の可能性

 では、なぜAIを巡って論争が起きるのか。(米テスラの創業者)イーロン・マスク氏や(英国の著名な宇宙物理学者)スティーブン・ホーキング博士のような人物が、AIや機械学習にマイナスの印象を与えようと力を尽くすのはなぜなのか。こうした悲観論に賛同してもしなくても、自己学習ソフトには大きなメリットだけでなくデメリットもあるのは既に明白だ。

 例えば、スマートマシンによる資源の効率的な配分は既に活用されている大きなメリットだ。その意味を小さな規模で確かめるために、自己学習ソフトを使って「微細な変化により」サーバーファームの電力消費方法を調整するメリットについて考えよう。

 研究チームによると、これは恐ろしいほど効果的だという。脳の役割を担う半導体が基本的な資源を節約するために、必要に応じてシステムの一部のスイッチを入れたり切ったりする。こうしたシステムを活用すれば、地球温暖化や「6度目の大量絶滅」の問題に対処できるだろう。

 自動車の運転からミスを起こしやすい人間という要素を排除することも、機械学習で可能になる大きなメリットだ。リポートによると、自動運転で高速道路を時速65マイル(時速105キロメートル)で飛ばす際の違和感は、しばらくたてば徐々に消えるという。言い換えれば、自動運転車はついに実現しつつある。

 バッテリー技術の向上に加え、通勤を効率化し、交通渋滞をなくして化石燃料の利用を大幅に削減・撤廃することもメリットになる。未来のクルマは相互通信し、道路工事や障害物、天候、運転に影響を及ぼしかねない事態など交通状況についてのデータを蓄積できるようになるだろう。

■リスク

 こうした特徴にはいずれもプライバシーの問題がある。米アップルの音声アシスタント「シリ」、韓国サムスン電子の「Bixby(ビックスビー)」、米マイクロソフトの「コルタナ」、そしてグーグルは利用者に関するデータを収集しなければ手品を披露できない。

 こうしたAIアシスタントを手掛ける大手IT各社のプライバシー対策はそれぞれ異なる。スマホは検索を処理するたび、遠く離れたサーバーファームに様々な種類の個人データを送る。その企業がこの情報をどう処理するか、これを誰に売るかはサービス利用規約に小さな字で説明されているだけだ。

 自己学習ソフトに対するもう一つの懸念は、重大な経験や意思疎通が人間の判断や感情を挟まずに実施されることに伴う影響だ。

 米ウェルズ・ファーゴなどの大手金融機関はAIを活用し、例えば顧客の信用力について公正な結論を出したいと考えている。これは既存の文化的偏見を完全になくすか、大幅に悪化させるアイデアだ。

 自動運転車に関しては、クルマがいわゆる「トロッコ問題」を円満に解決してくれる状況に人間自身が慣れられるかどうかが大きな課題だ。5人の命を助けるために1人の命を犠牲にするよう車に指示するソフトを、人は不安なく書くことができるだろうか。

 人間はこれまで、こうしたモラルのジレンマの重圧に耐えなくてはならなかった。あるいは、車がぶつかるまでの一瞬の間にこうした計算をやってのけるだけの時間的余裕はなかった。今後は、良くも悪くもコンピューターが代わりにモラルを判断できるかもしれない。

 このように、AIのイノベーション(技術革新)が私たちをどんな方向に導くかを見極めるのは難しい。だが、これは可能性に満ちているともいえる。

 ただ、科学者、哲学者、企業トップ、市民、政治家がそれぞれ、AIについて同じ見解を持てるかどうかが課題だ。

By Kayla Matthews=IT情報サイト「メイクユースオブ」シニアライター

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

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