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完全無線イヤホン対決 音質はBOSE、機能はソニー

「年の差30」最新AV機器探訪

左がBOSE「SoundSport Free」(2万9160円)、右がソニー「WF-1000X」(2万3690円)。価格は2018年1月上旬に家電量販店のネットショップで調査

スマートフォン(スマホ)とイヤホンをつなぐケーブルだけでなく、イヤホンの左右をつなぐケーブルもない「完全ワイヤレスイヤホン」。2017年後半、大手オーディオブランドからも新製品が相次いで登場した。音質や使い勝手はどうなのか。ソニーとBOSE(ボーズ)の完全ワイヤレスイヤホンを、昭和生まれのオーディオ評論家と平成生まれのライターが日常生活で使い比較してみた。

◇  ◇  ◇

販売が急伸している完全ワイヤレスイヤホン

16年に発売されたiPhone 7でイヤホンジャックが廃止されたことをきっかけに、17年はBluetoothによるワイヤレスイヤホンの売り上げが大きく伸びた。調査会社のGfKジャパンによると、ワイヤレスヘッドホン・イヤホン(Bluetooth対応ヘッドホン・ヘッドセット)の売り上げは数量ベースで前年比45%増、金額ベースで79%増(17年1~11月)。17年9月に発表されたiPhone 7の後継機であるiPhone 8やiPhone Xでもイヤホンジャックは搭載されず、今後もますます需要は伸びていくだろう。

中でもケーブルでつながっておらず、左右が独立した「完全ワイヤレスイヤホン」が注目を集めている。GfKジャパンによれば、17年1~11月の家電量販店における販売台数は前年同期の31倍に達した。同社アナリストの合井隆人さんは「Bluetooth製品はステレオヘッドホン市場を押し上げている存在だが、中でも完全ワイヤレスイヤホンは販売が急伸している」と話す。

便利というより不便がない

完全ワイヤレスイヤホンの最大のメリットはケーブルがないことだ。これにより、ケーブルを引っかけて外れたり断線したりする心配がなくなった。実際に使ってみると便利というよりも不便さがなくなり、ストレスを感じなくなったという印象が強い。特に冬の時期はマフラーやマスクに絡まることがないのが快適だ。

完全ワイヤレスイヤホンはアップルの「AirPods」が有名だが、それ以外はモダニティ「EARIN」などのクラウドファンディング発の製品や新興ブランドが中心だった。しかし、17年後半にはソニー、BOSE、JBLなど、主要ブランドから新製品の発表が続いた。大手メーカーの参入によって、「さらに販売拡大の動きが加速するとみられる」(合井さん)。

NIKKEI STYLEでは以前「AirPods」とソニーの「WF-1000X」を比較した記事を掲載している(「ソニーの完全無線イヤホン 音質ではアップルに圧勝」)。今回は17年10月に発売されたソニーの「WF-1000X」と、11月に発売されたBOSEの「SoundSport Free wireless headphones」を平成世代のライター(小沼)と、AV評論家の小原由夫さんが比較した。

存在感のBOSE、忘れるほどフィットするのはソニー

小沼(25歳のライター) まずはそれぞれの外観から比べてみましょう。こちらがキャリングケースです。

左がBOSE、右がソニー。写真上がキャリングケースを上から見たところで、写真下が正面からみたところ。両者とも幅は10センチほど。サイズはあまり変わらないが、BOSEの方が平らで、ソニーの方が背が高い
ケースを開けてみる。BOSE(左)の方が遊び心のあるデザインで、ソニーの方が洗練された印象だ

小沼 どちらも幅は同程度ですが、BOSEの方が平らで、ソニーの方が背が高いかわりに薄くなっています。重さはソニーが70g、BOSEが80gと大きな違いはありません。

小原(53歳のオーディオ・ビジュアル評論家) このケースは充電器の役割も兼ねています。これは完全ワイヤレスイヤホンの特徴ですね。ただ、どちらもケースが少しあか抜けてないなあ。もっと洗練されたデザインもできたんじゃないかと思ってしまいます。

小沼 カバンに入れていれば気にならないでしょうが、ポケットに入れていると少し存在感がありますよね。街を歩きながら装着する時も、ケースが手の中で安定せず少しまごつきます。続いて本体を比べてみましょう。

小原 ソニーは宇多田ヒカルさんをイメージキャラクターに起用しているだけあって、コンパクトで女性でも使いやすそうですね。逆にBOSEは大きめで、耳につけた時に存在感があります。

それぞれの本体を並べてみた。右のBOSEの方が一回り大きい。ラバーのウイングも大きく、これを耳の内部にはめることで安定感が得られる

小沼 重量はソニーが片耳6.8g、BOSEが片耳9g。2g程度の差ですが、装着してみると違いを感じます。BOSEは耳に固定するためのラバーウイングも大きいため、装着感はしっかりしていますが、やや圧迫感を感じました。ソニーは大きすぎず、小さくて不安になるということもなく「つけていることを忘れる」という完全ワイヤレスイヤホンのメリットは、ソニーの方がより味わえると思いました。

小原 デザインはどうですか? 僕はBOSEの方が個性があって好みなんですよ。昔はソニーもこうした個性的なデザインが得意でしたが、今回のWF-1000Xは品の良いデザインにまとめてきました。

小沼 BOSEはスポーツ対応をうたっていることもありますし、フィットネスジムなどで使うには映えそうです。逆に、どんな服装でもなじみやすいのはソニーではないでしょうか。いつでも使いやすいという意味で、僕はソニーの方が好きですね。

それぞれを耳に装着してみたところ。こうしてみると、BOSEの大きさがよくわかる

従来モデルと反対な音の個性

小沼 続いて、音質を比べてみましょう。まず、ソニーはどうでしたか? 僕は少し高音がとがって聴こえてしまったのですが……。

小原 私は高音は特に気にならず、むしろ少し低音域を強調しているように思いました。EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)など、打ち込み主体の音楽を聴いた時に気持ちいい音になっていると思います。

小沼 BOSEはどうでしょう。こちらは低音も高音もクリアで、全体的にフラットな音だと思いました。

小原 そうですね。BOSEはバランスが良くて、情報量が豊か。クラシックなどで弦のハーモニーを聴くとその特徴がはっきりとわかります。正直、今回の音は少し意外だったんです。両社のヘッドホンの傾向からすると、低音が強いのはむしろBOSEの特徴で、ソニーのほうがフラット。ブランドを伝えられずに目隠しテストをされたら、逆だと思ったかもしれません。

小沼 それは面白いですね。ではどちらの音が好みでしたか? 僕はいろいろなジャンルの音楽を聴くので、バランスの良さを重視します。そのため今回はBOSEが好みでした。

小原 AV評論家として再生性能を評価する場合、再生領域の広さや、それぞれのトーンのバランス、立体感や分解能などを確認していくのですが、今回はバランスが整っていて、分解能が高いBOSEを推したいと思います。

世代で意見が分かれた再生時間の差

ケースとそれぞれの本体を並べてみた

小沼 続いて連続再生時間です。こちらはソニーが3時間、充電ケース併用で9時間に対し、BOSEは5時間、ケース併用で15時間。BOSEはソニーの1.5倍以上ですが、この点についてはいかがですか?

小原 イヤホンの場合、3時間も連続で音楽を聴くことはないから、ソニーでも十分だと思います。ケースにしまえば充電もできるわけですし。

小沼 僕は3時間だと短く感じたんですよね。

小沼 街を歩いたり、作業をしたりといった「ながら聞き」をしていると、途中で途切れてしまうんです。もう少しタフでないと不安かなあ。

小原 この辺りは世代間の聴き方の違いが現れますね。Apple MusicやSpotifyなどのサブスクリプションで聴く若者は、再生時間が長い方が良いでしょうから。BOSEの5時間なら十分ですか?

小沼 そうですね、BOSEに関しては、日常的に使う分には不便は感じませんでした。あと、ケース含め15時間であれば、1日くらいケースを充電するのを忘れてしまっても安心ですよね。最近、Wi-Fiをモバイルタイプにしたので、充電が必要な機器が増えてしまって……。装着時のワイヤレスの快適さは素晴らしいけど、充電が必要なものが増えるという点では面倒だなあとも感じます。

小原 私の不満は、ハイレゾに未対応という点です。ワイヤレスは早くハイレゾに対応してほしい。せっかく良い音で音源を持っていても、それが生かされないのはもったいないと感じます。

役に立った「外音取り込み」モード

小沼 BOSEとソニーのイヤホンに戻りましょう。ペアリングのしやすさや、それぞれの特徴について見ていきたいと思います。

小原 どちらも最初にペアリング設定をしてしまえば、その後の使い勝手は大きくは変わりませんでした。ただ、ソニーに比べてBOSEは少し左右の音切れが多く感じました。

小沼 僕もBOSEの音切れは気になりました。左から音が聞こえなくなってしまうことがよくあった気がします。数秒で元通りにはなりますが、ぜひ改善してほしいところです。

小原 ソニーのノイズキャンセリング機能はどうでしたか? 私は少し物足りない気がして、電車に乗っている時などは、もっとしっかり機能してほしいと感じましたが。

小沼 そうですか。どちらもカナル型で、物理的な密閉感があるので、僕はあまり必要性を感じませんでしたね。ソニーについては、むしろアンビエントサウンド(外音取り込み)モードがうれしい機能でした。移動や街中でつけている時間が長いと、電車でアナウンスが流れた時や、洋服店で店員の方にふいに話しかけられた時に反応できるので重宝するんです。

小原 BOSEにはノイズキャンセリングは搭載されていないんですよね。ノイキャンと言えばBOSEという印象があったので、残念に感じました。

小沼 その点をBOSEに確認したのですが、「ランニングをはじめとしたワークアウト中に装着するのに適した仕様となっていることもあり、ノイズキャンセリング機能を搭載していない」という回答でした。その代わり、防滴機能が搭載されているんですよね。たしかに屋外でのランニング中に急に雨が降ったり、ジムで汗がかかったりすることはあるので、安心ではあります。でも、スポーツ対応をうたうなら余計にソニーのような外音取り込みモードのほうが役に立つんじゃないかと思います。ランニング中に車や自転車が近づいてくる音が聞き取れるのは、やっぱり安全ですから。

どちらも1作目としての作りこみは十分

小原 ここまで見てきて、小沼さんはどちらがほしいと感じましたか?

小沼 ノイズキャンセリングがない、大きいなどの不満はありますが、ほしいのはBOSEですね。音質がフラットなことと、やっぱり再生時間が長いのが決め手です。

小原 再生時間、こだわるなあ(笑)。だけど私もどちらかと言われるとBOSEですね。音質の良さで、やはりこちらに軍配があがります。解像感ではソニーもいいところがありますが、情報量の豊かさとトーンバランスという点で、BOSEが好ましく感じられました。とはいえ、両者ともハイレゾの醍醐味が味わえないなど、不満点はありますし、改善点はあると思いますが、どちらも完全ワイヤレスイヤホンの1作目としては力の入った出来栄えだと思います。それぞれの特徴をよく見比べた上で購入すれば、ワイヤレスの自由さを満喫できるのではないでしょうか。

2018年もますます成長の可能性

GfKの合井さん同様、小原さんもソニー、BOSEが完全ワイヤレスイヤホンを発売したことについて「これまでは新進メーカーが中心だった完全ワイヤレス市場に、ついに大手が乗り出したのは大きなトピック」と話した。この2社に引き続き、17年12月にはJBLもブランド初の完全分離型ワイヤレス「JBL FREE」を発売している。

iPhone7が発売された当時の16年時点では、関心を持つのは一部のマニアが中心というポジションだった完全ワイヤレスイヤホン。それから1年が経ち、今や大手メーカーが続々と参入するほど注目を集めている。18年もますます成長していくことになりそうだ。

(ライター 小沼理=かみゆ)

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