2018年9月24日(月)

中国の「シャープパワー」に対抗せよ

The Economist
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2017/12/20 2:30
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The Economist

 新興大国が既存の大国を脅かすようになると、しばしば戦争へと発展する。この現象は、最初に提唱した古代ギリシャの歴史家にちなんで「ツキディデスのわな」と呼ばれる。これが近年、中国と欧米諸国、特に米国との関係に影を落とし、様々なあつれきを生んでいる。中国は、外国の領土を狙っていないにしても、外国人の頭の中を征服しようとしているのではないかと今、多くの人が恐れている。

 中国のその手口について、最初に警告を発したのはオーストラリアだった。同国政府は5日、中国がオーストラリアの政界や大学、出版界に介入しているという疑惑から、国内の政治家に影響を及ぼそうとする外国の「前例のない極めて高度な」取り組みに対処すべく新法案を提出した。12日にはオーストラリアの野党の上院議員が、中国から資金を受け取り、同国の肩を持つような発言をしたという疑惑から辞職した。英国やカナダ、ニュージーランドも、同様の警鐘を鳴らし始めている。10日にはドイツが、中国がカネを使ってドイツの政治家や官僚を取り込もうとしていると非難した。13日には米議会が、中国の新たな影響力について公聴会を開いた。

■工作、嫌がらせ、圧力の3要素

 米ワシントンのシンクタンク「全米民主主義基金(NED)」は、中国による一連の動きを「シャープパワー」と命名した。「ソフトパワー」は、その国の文化や価値観の魅力による強みを指すが、シャープパワーは、独裁国家が外国に自国の方針をのませようと強引な手段に出たり、海外の世論を操作したりするためのものだ。

 欧米は、中国のこうした動きに対処する必要があるが、単に中国との関係を断てば、それですむわけではない。かつてのソ連とは違い、中国は世界経済に深く組み込まれているからだ。交渉で事態を打開できる政治的手腕を持つ国際的指導者を欠いている現在、欧米諸国は倫理的に中立の立場を模索していく必要がある。それには、まずシャープパワーとその仕組みを理解しなければならない。

 中国は多くの国と同様、ビザや補助金、投資、文化などを通じて自国の利益を追求してきた。だがその行動は最近、威嚇的で幅広い範囲に及びつつある。中国のシャープパワーは、取り入った後に抵抗できなくさせる工作活動、嫌がらせ、圧力の3要素を連動させることで、対象者が自分の行動を自制するよう追い込んでいく。究極の狙いは、そのターゲットとする人物が最後は、資金や情報などへのアクセス権、影響力を失うことを恐れて、中国側が頼まずとも自分たちにへつらうように転向させていくことだ。

 オーストラリアとニュージーランドでは、中国マネーが政党や政治家個人への献金という形を通じて政治に影響を及ぼしているという疑惑が浮上している。前述のドイツのケースでは、中国はビジネス向け交流サイト「リンクトイン」を使い、政治家や政府高官に人材スカウトやシンクタンクの研究員のふりをして近づき、彼らに無料の旅行などを提供し、取り込もうとしていると独情報機関が明らかにした。中国は華人・華僑を監視してきた歴史を持つが、近年は外国人を取り込む工作活動を強化している。

■ギリシャの忖度(そんたく)

 嫌がらせによる脅威も激しさを増している。極めてあからさまなケースもある。中国の民主化を訴えた活動家(編集注、7月に死去した劉暁波氏)にノーベル平和賞を授与したノルウェーに対し、激しい経済的な報復を与えたのは有名だ。このほか中国に批判的な人物は学会の登壇者として呼ばない、あるいは学者が中国に都合の悪い研究テーマは意図的に避けるといった例もある。これら多くの嫌がらせは、さほど重大にはみえず、中国政府の関与を証明するのも難しいが、深刻な影響をもたらす可能性がある。既に自説を撤回するように中国に圧力をかけられた欧米の大学教授は複数に上るし、中国に批判的な外国の研究者は、中国の資料を閲覧させてもらえなくなることも考えられる。そうなると政治家にとっては、自国の中国専門家の知識が限られてしまい、(対中政策で)知恵を借りようにも難しくなる可能性が出てくる。

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