アマゾン旋風ブラジル上陸、ECの競合熱く

2017/12/20 6:30
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世界中で吹き荒れる「アマゾン旋風」が南米大陸にも上陸した。米アマゾン・ドット・コムは10月、ブラジルに本格進出した。電子機器を手始めに、11月には雑貨の取り扱いも開始。競合他社は対応に追われる。ブラジル経済は未曽有の不景気からの回復途上だが、電子商取引(EC)市場は急拡大しており、成長余地も大きい。社名の由来となったアマゾン川を擁する地で、急速に存在感を高めている。

「ブラックフライデーのセール、最大90%オフ!」。11月中旬、アマゾンは広告で堂々と宣言した。10月に電子機器の販売を始めたことをきっかけに注目が集まるなか、ブラジルでも定着しつつある米国発祥の大規模商戦を契機に、取扱商品の拡充と大胆な割引で耳目を集める。

あおりを食うのは、これまでブラジル市場で先行していた地場企業だ。アルゼンチン発祥の南米最大のECサイト「メルカドリブレ」の運営企業は、アマゾン参入の報を受けて株価が急落。家電ECサイト大手マガジンルイザも同様で、アマゾンの影響力の大きさが意識された形だ。

人口2億人を抱えるブラジルだが、EC市場は発展途上だ。英調査会社ユーロモニターによると、2016年時点で小売市場に占めるECの比率は5%弱。中国の15%や米国の11%には遠く届かず、高齢化でECが未発達とされる日本の7%をも下回る。

広大な国土に対して物流網が貧弱なことや、貧富の差の大きさに端を発するIT(情報技術)リテラシーの格差、決済手段の欠如などが背景にあるとされてきた。

しかし、こうした状況は急速に変わりつつある。ブラジルEC協会によると、17年のブラジルのEC市場は前年比12%拡大し、約600億レアル(約2兆円)の規模になるという。16年までの2年連続のマイナス成長で消費が落ち込むなか、EC市場は堅調に育っていた。

EC普及の背景となっているのは、多くの新興国でみられるように、スマートフォン(スマホ)の普及だ。また、政府が国を挙げてカード決済の普及を進めていることから、決済のボトルネックも徐々に解消されつつある。

後発組のアマゾンに対抗すべく、先発組はサービス拡充に力を入れる。マガジンルイザは実店舗を持つ強みを生かし、新規出店を強化。既存店の改修などを含め、顧客との接点を増やし差異化する戦略を進める。

メルカドリブレは配送料無料サービスの対象商品を増やすほか、このほどEC販促ベンチャーの買収を発表し、個人商店や企業が出品できる仮想空間のショッピングモールである「マーケットプレイス」に磨きをかける。アマゾンが同分野で手数料引き下げに出ているとの報道もあり、火花を散らしている。

ブラックフライデーも終わり、主戦場がクリスマス商戦に移った。各社とも割引や送料無料など販促キャンペーンの投入に力を入れる。巨人・アマゾンの登場で競争が激しくなり、EC市場の拡大ペースが加速することは間違いなさそうだ。

■金融政策が消費後押し

長引く不景気で低迷が続いたブラジルの消費市場だが、足元の数字は最悪期を脱しつつある。背景にあるのが、ブラジル中央銀行による金融緩和だ。

ブラジル中央銀行は6日、政策金利を0.5%引き下げ、年7%にすると発表した。利下げは実に10会合連続で、1999年の完全変動相場制への移行以来、史上最低金利となった。

歴史的に高金利国のブラジルだが、消費者は分割払いを好むため、高額商品の販売現場では分割払いが日常的に使われている。

ECサイトでもその傾向は変わらず、どのサイトでも通常の料金とは別に分割払い時の月々の支払料金が示される。金利低下は月々の支払い負担を減らすため消費を刺激する効果をもたらす。

小売店やECサイトにとっても金利低下は追い風だ。店側が分割払い時の金利を負担するケースもあり、金利低下はそのままコスト削減につながる。また資金調達も容易になり、攻めの設備投資をしやすくなるという効果もある。

ただブラジル流の「異次元緩和」は長く続かないとの見方が強い。消費の緩やかな回復により、足元のインフレ率はわずかに上昇傾向にある。緩和は2018年前半には打ち止めとなり、18年後半には再び利上げが始まるとの見方が市場では大勢を占める。EC各社とも低金利の恩恵は長く続かないとみた上でアクセルを踏んでいるようだ。

(サンパウロ=外山尚之)

[日経産業新聞 12月20日付]

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