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級友の誘いでその気に バスケットボール・八村塁(中)

2017/12/19 14:30
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八村塁が中学生でバスケットボールを始めたときも、最初から「これに懸ける」という決意があったわけではないと言う。そもそも、やるつもりもなかった。

「小学生の頃、家にバスケットボールがあって、ドリブルをついていたのを思い出します」。それが彼のバスケットの原風景だが、当時一番熱中していたのは野球で、陸上でも非凡な才能を発揮していた。「陸上で全国大会へ行ったんです。富山県で新記録も出した」。よって中学では「陸上をやろうかな」と漠然と考えていたという。

試験や英語も猛勉強で一つ一つクリア

試験や英語も猛勉強で一つ一つクリア

しかし、バスケ部だった級友の執拗な勧誘で人生は変わった。「『バスケをやらないか。来い、来いっ』て本当にしつこくて。2週間ぐらい毎日誘いに来ていた」。その熱意にほだされ、「分かった、行くよ」と伝えた。もっとも、それさえも見学のつもりだったが、「行ったらプレーをさせられて。コーチもすごいウエルカムで、『おお、いいぞ!』なんて言ってくれて」。まんまとその気にさせられたわけだ。

もし、あのまま陸上を続けていたら、どうなっていただろうか。日本の短距離界は今、サニブラウン・ハキーム、ケンブリッジ飛鳥らハーフアスリートがけん引しているが、アフリカのベナン生まれの父を持つ八村の桁外れな身体能力を考えれば、その一角に加わっていた可能性もある。

桁外れの身体能力、才能すぐ開花

バスケットでも才能を発揮するのに時間はかからなかった。富山・奥田中学3年の時、全国中学校体育大会でチームを準優勝に導き、大会のベスト5に選ばれた。

高校は名門の宮城・明成高校に進学。高校の頂点を決めるウインターカップで3連覇をなし遂げた。国際舞台でも2014年に17歳以下世界選手権に出場、1試合平均22.6点を挙げて大会得点王になった。高校3年の時には、世界中のトップ高校生が集う「ジョーダン・ブランド・クラシック」にも招待されている。

こうなるともう、日本にはある意味、彼の居場所はなかった。一人、次元が違ったのである。

米留学は自然な流れだったが、一つだけ障害があった。「正直言って勉強が好きじゃなかった」。奨学金をもらえるとしても、まずはSAT(大学進学適性試験)の基準点を突破する必要があり、その後、ゴンザガ大のESL(付属の英語学校)で英語を学び、コミュニケーション能力をつけることを求められた。

さらに、無事に入学を果たしても、今度は際限のない宿題が待ち受ける。学校で一定の成績を取らなければ、試合どころか、練習にも参加できなくなる。猛勉強を重ね一つ一つクリアしているが、「自分ひとりでやっていたら絶対にできなかった。諦めていたかもしれない」と八村は周囲に感謝する。

心が折れかけるたびに多くの人に支えられ、「アカデミックアドバイザーもいますし、家庭教師もいますし、コーチ陣とかも声をかけてくれる」と異国でも孤独は感じていない。八村は自分がなぜコートに立てるのか。それをはっきりと自覚している。=敬称略

(スポーツライター 丹羽政善)

〔日本経済新聞夕刊12月19日掲載〕

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