2018年12月18日(火)

人手不足、業種格差くっきり 銀行にはリストラ余地

2017/12/18 23:36
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人手不足の業種間格差が一段と広がっている。労働力不足がもっとも深刻なのは外食や運送会社、建設などで逼迫度合いはバブル期なみの厳しさだ。製造業は機械化で業務の置き換えが進んでいることなどからそこまで厳しくなく、銀行もなお余裕がある。人手不足業種は合理化やパート賃上げなど対応を迫られているが、業種をまたぐ人の移動などを後押しする環境整備も欠かせない。

日銀が18日、企業短期経済観測調査(短観)の業種別集計を公表。従業員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と回答した割合を引いた雇用人員判断指数(DI)で業種ごとのバラツキが鮮明になっている。

マイナス幅が最も大きかったのは宿泊・飲食サービスでマイナス62。2004年に集計分類を見直して以降で最低だ。運輸・郵便はマイナス47でバブル期よりも悪化し、過去最低を記録。建設や小売りも11年ごろから右肩下がりが続いている。

こうした業種は「機械やIT(情報技術)で作業が代替しづらい労働集約型産業でパート比率も高い」(みずほ証券の末広徹氏)。労働力人口が減る中で景気回復とインターネットによる買い物急増などで宅配能力が限界に近づき、料金値上げなどに踏み切っている。

東京商工リサーチによると、1~11月の人手不足が原因の倒産は294件だ。全体の倒産件数が減少する中でもほぼ前年並みで、建設業とサービス業が半数を占める。賃上げに耐えられない、コスト増を価格転嫁できない、といった体力の弱い中小企業を軸に淘汰の波が広がるかたちだ。

銀行は過去の大量採用で人材に余裕がある

銀行は過去の大量採用で人材に余裕がある

製造業の人手不足も深刻だが、運輸などとの比較でみればまだ軽い。たとえば電気機械はマイナス20でバブル期(最低でマイナス47)とは差がある。ロボットやITで代替できる作業が多いほか、生産拠点を海外に移す動きもある。受注が増えても、既存設備の稼働率を上げることで対応できる企業も多いとの見方がある。

銀行はマイナス4で、過去5年をみてもほぼ0近辺での横ばいが続いている。バブル期などの大量採用で人材に余裕があるほか、最近はITの活用で業務量も減っているという。メガバンクは3行あわせ3万人分を超える業務量の削減を計画しており、潜在的に外部に人材を供給する余力が高まっているといえる。

人手に余裕のある業種から、少しでも不足する業種へと人材が移れば労働市場全体が効率的に回るはずだ。現実には処遇格差や技能がカベとなり、余剰人員の移動はそう単純に進まない。

労働政策などに詳しい日本総研の山田久主席研究員は「これまで付加価値や賃金が低かった業種ほど、いま人手不足感が強まっている」という。数年前までは低賃金で過酷な労働を強いられる「ブラック企業」が社会問題化。企業の生産性が低くとも安価な労働力でなんとか利益を出せていたが、景気回復に伴い労働市場が激変した。

人件費上昇で企業側も対応に動いている。ヤマト運輸は荷物の「総量抑制」を導入。外食や小売りで深夜営業をやめる例も相次ぐなど不採算サービスからの撤退も加速している。「企業が低採算のまま雇用流動化を進めようとしても労働市場は活性化されない」(山田氏)。生産性向上の動きがどこまで進むかで成長の持続力も左右されそうだ。

転職がしやすい労働市場の構築に向け政府の仕事も多い。たとえば裁判で「解雇が不当」とされたときに労働者がお金を受け取って解決する金銭解決制度の導入をはじめとする雇用流動化策や外国人労働者の受け入れが大きな課題だ。

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