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もう系列で縛れない 変化早く、自前に限界

NextCARに挑む CASEの衝撃【E】

2017年、世界の自動車業界は電動化へと大きくかじを切った。相次いでエンジン車の規制が打ち出され、それに呼応して完成車各社は電気自動車(EV)などの車種拡充を急ぐ。エンジン車とは異なる技術が、性能や価格を左右することになる電動車。完成車メーカーと部品メーカーの関係に大きな変化が訪れている。

日本電産は仏グループPSAと駆動モーターの開発・生産で合弁設立へ

電動車で重要な三大部品と言えば「バッテリー」「駆動モーター」、モーターを制御する「インバーター」だ。12月、このうちモーターとバッテリーで日本の完成車メーカーやサプライヤーが相次いで動きを見せた。

まず4日。日本電産の永守重信会長兼社長が記者会見で熱弁をふるった。仏グループPSA(旧プジョーシトロエングループ)と、駆動用モーターの開発と生産を担う新会社の設立を発表。「技術革新が起きるときは(変化の)時間軸が短くなる。IT(情報技術)の時間軸に対応してきた当社は強みがある」と自信を見せる。

提携を発表し握手するトヨタ自動車の豊田章男社長(左)とパナソニックの津賀一宏社長

13日に電池事業でのパナソニックとの協業検討を発表したトヨタ自動車の豊田章男社長。「パナソニックには車載用電池のリーディングカンパニーとしての技術がある」と持ち上げた。

「クローズせず」

一見、完成車メーカーが重要部品の確保へ有力サプライヤーを囲い込む動きのようにも見える、2つの発表。だが豊田社長は「クローズすることなく幅広く自動車メーカーの電動車の普及に貢献したい」と語り、日本電産とPSAの合弁会社も他の完成車メーカーへのモーター供給も視野に入れる。車の性能を左右する重要部品にもかかわらず、完成車メーカーは供給者を縛ろうとしない。

これまで日本勢は得意とするハイブリッド車(HV)の中核部品を内製してきた。垂直統合の自前主義だ。だが変化は早い。技術の蓄積を持つ専業メーカーの力を借りようと、欧州などで広がってきた水平分業の波は日本にも押し寄せる。

日産自動車NECとの共同出資の車載用電池会社を中国の投資ファンドに売却する。中国や韓国メーカーが供給能力を積みます中、投資競争から距離を置きEV自体の開発・生産に注力する。15日に日本自動車工業会会長として記者会見した西川広人社長は「囲い込むのではなく、技術を持つ会社とどうつきあうかが競争上のポイントになる」と語った。

英調査会社IHSマークイットの安宅広史マネジャーは「(車両価格を下げるため)バッテリーなど価格は下げなくてはならない。それには数をどう確保するかが問題になる」と指摘。系列でサプライヤーを囲い込めば生産量を伸ばせず、自分の首を絞めることになる。永守会長は「系列の顧客としか取引できなかったのが、変わっていく」と期待を隠さない。

そこで完成車メーカーに手広く供給するメガサプライヤーが存在感を増す。完成車メーカーは投資を抑えながら、製品を素早く投入できる。ボルボ・カー(スウェーデン)はプラグインハイブリッド車(PHV)のモーターをカナダのマグナから調達している。独ボッシュの電動機構は、中国や欧州メーカー向けに19年の採用が決まった。

軽量化に好機

一方、これまで主役だったエンジンはピラミッド型に広がるメーカー群から6千点超の部品を集めていた。これまでの延長線上では生き残れない企業は危機感を募らせるが、エンジンで磨いてきた技術の先に、電動化時代のチャンスを見いだすメーカーもある。

栃木県野木町で1月に開かれたマラソン大会で、1人乗りの原付きミニカーがランナーと並走した。エンジン部品を手掛ける日本ピストンリングが開発した新型モーターを搭載した実験車だ。焼結技術で特殊な鉄粉を固めたモーターコアが特徴で、鋼板を重ねる従来のコアより力があり、小型化もしやすい。カムシャフトの技術が生きた。

日本ピストンリングは、焼結技術を応用した独自のモーターコアで従来のコアよりトルクを高める

同じトルクなら体積で3~4割の小型化が見込める。二輪車やシニアカーなど車輪が小さい小型車両がターゲットだ。「電動化時代が来る前に取り組まなくては間に合わない」。10年の立ち上げ時からチームを率いる竹口俊輔部長は語る。

電動化は今まで日本の自動車に食い込めなかった「いちげんさん」にとっても商機になる。特にバッテリーによる重量増を相殺する軽量化技術は注目されている。

「自動車関連の開発案件は200件超、少なくとも4分の1は電気自動車関係だ」。金属と比べ軽量の樹脂製ベアリングを手掛ける独イグス日本法人の北川邦彦社長はそう話す。北川社長が就任した11年、自動車関連の開発案件は2件しかなかったという。電動車は発熱も少なく樹脂の使用範囲は広がる。

日本自動車部品工業会の調べでは、加盟社の出荷額のうち35%以上はエンジン部品や動力が変われば大きく影響を受ける駆動・伝達部品など。部品の出荷額は完成車を上回り、電動化シフトは日本の製造業全体に大きな影響を与える。

電動化や自動運転、シェアリングなど自動車業界を巡る変化がどんな早さでどこまで進むか、誰も見通すことはできない。それぞれのプレーヤーの模索が続く。

(企業報道部 江口良輔)

[日経産業新聞 2017年12月15日付]

電動化(エレクトリック)

 自動車の駆動装置をエンジンから電気モーターに置き換えたり、併用したりすること。電気自動車(EV)、エンジンとモーター併用のハイブリッド車(HV)、両方を併用し外部からの充電もできるプラグインハイブリッド車(PHV)、水素と酸素で電気を発生させて走る燃料電池車(FCV)などがある。米国や中国では販売台数の一定比率を環境車にするようメーカーに求めるZEV(ゼロエミッションビークル)規制が強化されている。HVはZEVに含まれず、EVやFCVは充電や燃料供給インフラの整備が課題。

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