/

シェア文化、敵か味方か 間合い探る大手

NextCARに挑む CASEの衝撃【S】

1台を複数の人で共有する「カーシェアリング」や相乗りの「ライドシェア」など、クルマを巡り「所有から利用」の波が押し寄せている。自動車メーカーにとっては収益源である新車販売への影響は避けられない一方、IT(情報技術)企業など異業種からは商機とみた参入が相次ぐ。シェアリングとどうつきあうのか。国内メーカーは間合いを計りかねている。

ホンダが11月、車の貸し出しサービス拡大を発表した。新たに「エブリ・ゴー」と名付け、横浜市と大阪市に対象エリアを広げた。2013年から東京都内の一部で試験していた。

販売喚起の一環

利用者はホンダの販売店や提携する駐車場にある車両をインターネットで予約し、24時間いつでも借りられる。仕組みはパーク24やオリックス自動車などのカーシェアサービスと大きく違わないが、あくまで「気軽なレンタカー」を名乗る。

企画した法人営業部カーレンタル事業課の井村圭佑チーフは「クルマを持ってもらいたい。だから気軽に試乗感覚で使えるサービスにした」と話す。目的はあくまでホンダ車の販売。利用時間は最低8時間と、15分からが主流のカーシェアと比べ長め。試験期間中は実際にホンダ車の購入につながった事例もあるという。

日産自動車は2018年1月、正面からカーシェアを掲げた事業を始める。電気自動車(EV)「リーフ」と小型ハイブリッド車(HV)「ノート」を販売店やレンタカー店舗に配置。東京都や大阪府など9都府県で約30台を使う。

最低15分からと、利用者の使い勝手は一般的なカーシェアと変わらない。だが最終的な目的はやはり販売の喚起だ。車種を電動車に絞り、最新技術をアピールする。

交通エコロジー・モビリティ財団(東京・千代田)が17年3月に実施した調査では、国内のカーシェアサービスの会員数は108万人超と前年比で28%増となり、初めて100万人を超えた。もっともホンダや日産の新サービスはこうした需要を取り込む狙いというより、新車や中古車販売への影響を見極めようとしているようにも見える。

車の保有半減も

デロイトトーマツコンサルティングはシェアリングの普及により、2030年には世界の主要8地域で、最も影響を受ける場合は車の保有台数が半減すると試算する。

米国では既にシェアリングが新車販売を侵食しているとの指摘もある。足元のセダン不振は、都市部ではシェアリングで移動が済むために2台目の需要が無くなり、1台で日常使いから家族でのレジャーまでこなす多目的スポーツ車(SUV)への移行が進んでいるからとの見方だ。

日本でも通勤や通学に公共交通機関を使う都市部では、経済性が意識されそうだ。デロイトトーマツの試算では年間走行距離が1万2000キロ未満なら、移動コストはマイカーよりカーシェアの方が安くなるという。

一方、海外には積極的にシェアリングの需要を取り込む自動車メーカーもある。独フォルクスワーゲン(VW)は4日、ライドシェア専用のEVを公開した。6人乗りのミニバンで、18年末に独北部のハンブルクで導入する。独自のアルゴリズムを取り入れ、同じ方向に行く利用者が相乗りできるようにする。

ライドシェアのブランド名は「モイア」。アウディなどと並び、VWグループの13番目のブランドと位置づける。専用EVは構想から10カ月で完成させる身軽さだ。

中国の浙江吉利控股集団(浙江省)は新ブランド「リンク・アンド・コー」のSUVで、運転席の液晶パネルに「シェアボタン」を搭載した。使わない間、貸し出し可能な時間を設定し、第三者のスマートフォンに情報が届く。米ゼネラル・モーターズ(GM)も16年から北米でカーシェア「メイヴン」を展開し、会員は10万人を超えた。

戸惑う国内メーカーを尻目に、シェアリングは進化を遂げている。中古車店「ガリバー」のIDOMは16年、月額で車両を貸し出すサービス「NOREL(ノレル)」を始めた。消費者から買い取った店舗在庫を厳選し、最低1万9800円(税別)で提供している。

車種は輸入車から軽自動車まで幅広い。リースと同じ仕組みだが、最短90日で車種を変えられる。中古車流通のノウハウを持つ同社ならではのサービスだ。会員は6000人を超えた。

「家庭用ゲームからソーシャルゲームへ移行したように、シェアの文化を広げたい」。ディー・エヌ・エー(DeNA)の個人間カーシェアサービス「エニカ」の事業責任者、馬場光氏は言う。

本来は個人が車を貸し借りする仲立ちをするサービスだが、ここには自動車業界から近づいてきた。3月には独アウディの日本法人が10台の「A3」を無償で貸し出した。ハードルが高いイメージが強い輸入車を広める手段として活用した。エニカは外部との連携をテコに消費者との接点を増やしていき、会員数を伸ばすという。

シェアリングは車の需要を減らす「敵」なのか、車で出かける楽しさをより身近なものにして、恩恵をもたらす「味方」なのか。その結論がどうであれ、自動車メーカーは正面から向き合うことが避けられない。

(企業報道部 河野真央、古川慶一)

[日経産業新聞 2017年12月15日付]

シェアリング

 1台の車を複数人で共同使用する「カーシェアリング」や、相乗りの「ライドシェア」など自動車の新しい使われ方。カーシェアリングのビジネスモデルはレンタカーと同じだが、15分単位など短時間の使用を想定する。ライドシェアは出発地や目的地が同じ人を対価を得て運ぶ仕組みだが、米ウーバーテクノロジーズが自家用車で客を運ぶビジネスモデルを広げた。日本では一般のドライバーが有料で人を乗せることは「白タク」と呼ばれ禁止されている。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン