商都走る起業のよろず屋 大阪の名物インキュベーター

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2017/12/18 6:30
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■関西と海外を橋渡し

大阪市は国内外の起業家を集めたイベントを精力的に開催(ハックオオサカ2017の開催風景)

大阪市は国内外の起業家を集めたイベントを精力的に開催(ハックオオサカ2017の開催風景)

シリコンバレーで見た光景は忘れられない。「街そのものがコミュニティー。起業家も学生も投資家も、誰もが顔を合わせて意見を言い合える環境があった」。米国側の投資決定のスピードも速い。ただ、当時の日本企業の開発スピードでは米国で進むITの波に追いつけなかった。事業は結果的に売却されたが、吉川さんはこの経験を経て「日本の産業振興やベンチャー投資に何が足りないかを改めて考えるようになった」と話す。

特定の業種にお金を落として支援する従来の産業振興では、新産業が持続的に育たない。「新しい産業を育てるには、業種の枠をとりはらって化学反応を起こすしか近道はない」(吉川さん)

あらゆるモノがネットにつながるIoTや人工知能(AI)など技術が多様化し、起業家1人でできる領域は限られる。スタートアップと連携したい大企業にとっては、1から協業先を探すには知見が必要だ。吉川さんは「行政の信用力を良い意味で生かしてもらい、立場を気にせず交流をしてほしい」と話す。

成果は生まれつつある。厚生労働省の調査では大阪府の開業率(15年時点)は5.9%と全国平均(5.2%)や東京(5.6%)を上回り増えている。首都圏に比べて割安な賃料も背景に、近年は大阪駅近くに本社を置くIT企業や、開発拠点を関西におく大手IT企業も増えた。

ただ、関西の起業家は成功すると東京に移転してしまうケースが多い。顧客や投資家が東京に集積しているためだ。

「市場は東京だけではない」と考える吉川さんは、アジアなど海外との連携を模索する。

大阪イノベーションハブでは国内外の起業家を集めたイベントを毎年開催。今年度は中国深圳市で開かれた日本の起業家のイベントへの参加も呼び掛けた。大阪市からは電池診断装置を手がけるゴイク電池(大阪市)など4社が参加。「中国の大手バッテリー関連企業との共同研究につながった」など、現地での商談で手応えを感じたとの声が多くあがった。

「大阪はもともと商人の町。人や物が行き交う市場の機能をスタートアップの世界でも実現したい」。吉川さんはハコモノを作るだけではなく、企業の課題解決をいかに手助けできるかが行政の役割と自任する。今日も「Osaka」のロゴが光るお決まりのTシャツを着て現場を走り回る。

(大阪経済部 川上梓)

[日経産業新聞 2017年12月18日付]

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