「自画撮り」要求に罰則 少女ら被害、東京などで条例
子供がスマートフォン(スマホ)で自分の裸を撮影し、他人に送る「自画撮り」を防ぐため、不当な要求に罰則を設ける動きが出ている。東京都は15日に改正条例案が成立する見通しで、兵庫県も罰則を新設した。被害は中高生を中心に全国で急増しており、警察や自治体が対応に本腰を入れ始めている。

「SNSで知り合った男性に(自分の)裸の写真をたくさん送ってしまった」「断っても下着姿の写真を要求され、送ってしまった。その後も裸の写真を要求され拒否すると、今までの写真を友達に送ると脅してきた」
東京都が開設している青少年向けのインターネットや携帯電話のトラブル相談窓口「こたエール」には、こうした自画撮りを巡る相談が後を絶たない。2016年度の全相談件数は約1400件で、このうち自画撮りを含む「性的画像に関する相談」は7.6%。12年度は1.8%だったが、年々相談件数に占める割合が増えている。
警視庁は15年、ネットのコミュニティーサイトで知り合った女子中学生(当時14)に、自身の裸の画像を送らせ、携帯に保存したとして、佐賀県の無職の男(同25)を児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕した。
18歳未満が被写体の自画撮りの画像は、同法が製造や提供、所持などを禁じる児童ポルノに当たる。ただ画像を要求する行為自体は規制しておらず、「画像拡散などの二次被害を防ぎきれない」(警察関係者)との指摘もあった。
都は2月から有識者会議で被害防止のあり方を議論し、12月1日に始まった都議会定例会に条例改正案を提出した。改正案は自画撮りの提供を求めるとき、だましたり脅したりする行為があった場合に30万円以下の罰金を科す。都外在住者も処罰対象とした。
改正案は15日の本会議で可決、成立する見込み。都は18年2月の施行を目指している。
兵庫県議会では同様の条例改正案が14日に成立。18年4月に施行する。県青少年課は「被害が深刻化する前に摘発でき、罰則により抑止力も期待できる」と強調する。
警察庁によると、16年に警察が摘発した事件で自画撮りの被害に遭った子供は延べ480人で、4年間で2.3倍に増加。中高生が9割以上を占める。
こうした被害を防ごうと、都青少年・治安対策本部は都内の中学、高校で行っている子供の性的被害に対する注意などを呼びかける出前講座で、17年から自画撮りの実態を紹介。「ネット上で見知らぬ人物とやりとりをしないで」などと自衛策を伝えている。
「危険性話し合って」
自画撮りを巡る被害の増加について、子供のインターネット利用に関するトラブル相談に応じる「全国webカウンセリング協議会」(東京)の安川雅史理事長は「幼いうちからスマホを持つようになり、リスクを理解せずに利用していることが一因」と指摘する。
使うアプリなどを制限していない家庭が多いといい、「どんな被害に遭う危険性があるかを学校や家庭で話し合い、利用のルールを設けることが重要」と話す。
万が一、被害に遭った場合は、迅速な対応が肝心だ。ネット上に流出した画像などの削除相談を受け付ける「セーファーインターネット協会」(同)の吉川徳明さんは「画像の拡散を食い止めるには、とにかく早く警察などに相談して」と呼び掛ける。
子供が被害を抱え込み、画像が既に拡散された後に相談に来るケースもある。吉川さんは「被害に遭った子供自身も傷ついている。保護者は頭ごなしに叱らず、子供が打ち明けやすい環境を作ってほしい」と話している。