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長期投資なら ビットコインでなく日本株(窪田真之)

楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

PIXTA
「バブルとは本来の価値と比べ異常な高値になることを指す。その点で現在の日本株はバブルとは考えられない」

2017年は日経平均株価が大きく上昇し、約26年ぶりの高値を更新しました。リーマン・ショック以降、日米欧の金融緩和が長引いたことで、あふれたマネーが世界中でいろいろな資産の価格を押し上げています。その一部が日本株にも流れ込みました。これはバブルでしょうか?

結論からいうと、私は現在の日本株がバブルとは考えていません。バブルとは本来の価値と比べ異常な高値になることを指します。投資尺度からは、まだまだ割安だと思います。株価指標で説明できない高値まで買われていたバブル期とは異なります。

振り返ると、私が日本株のファンドマネジャーをやっていた1987年から2013年まではバブルが崩壊していく過程でした。過去25年間、日本株は不動産バブル崩壊(90年)、金融危機(98年)、IT(情報技術)バブル崩壊(2001年)、リーマン・ショック(08年)と、何度も急落しました。その間、日本企業が取り組んだ経営改革が実り、財務や収益力に加え、株主還元の姿勢を大きく改善させたことが、今評価されるようになってきました。

世界を見渡すとバブル警戒の動きも

ただ、世界を見渡すとバブルを警戒させるような動きが増えてきたのは事実です。先月、レオナルド・ダビンチが描いたキリストの絵画がニューヨ-クで競売にかけられ、4.5億ドル(約500億円)で落札されました。これは美術品の落札額として史上最高です。

たった1枚の絵に、それだけの美術的価値があるのでしょうか? 私は美術品としての価値ではなく、ダビンチの絵という希少性が価値につながっていると考えます。もし、美術館に所蔵されているダビンチの絵が一斉に売りに出されれば希少性が失われるので、価格は大きく下がるでしょう。

今から30年前の1987年に、安田火災海上保険(現在の損保ジャパン日本興亜)がゴッホの絵画「ひまわり」を53億円で落札して話題になりました。当時の1枚の絵の落札額としては史上最高でした。高すぎる買い物でないかと批判もありました。

ゴッホが描いた「ひまわり」の絵は全部で7点あります。どれも名作ですが、ニューヨークのメトロポリタン美術館に安田火災が落札したものとは別の「ひまわり」があります。落札当時、私は現地で勤務していましたので、さっそく見に行きました。

そこで、私はとても驚きました。たくさんの名画に交じって、「ひまわり」が無造作に展示してあったからです。正直、希少性があるように見えませんでした。当時はソニーのコロンビア・ピクチャーズ買収や三菱地所のロックフェラーセンター買収のように、株バブル、土地バブルに沸くジャパンマネーは飛ぶ鳥を落とす勢いでした。それが絵画の世界にまで及んできたと考えざるを得ませんでした。

希少性で買われる物の形は時代とともに変わります。最近、価格が急騰して世界中で話題になっているのは仮想通貨のビットコイン(BTC)です。円建て価格は今月、一時1BTC=220万円をつけました。

12年後半には1BTC=1000円で買えましたが、15年末には5万円台まで上昇しました。この頃から、ビットコインはバブルという人が出始めました。ところが、ビットコインの価格はさらに上昇を続けました。16年には10万円を超え、そこから上昇が加速したのです。

12年に1000円で買った人は、一時その2200倍もの価値を得たことになります。ちょっとした好奇心からビットコインを買って持ち続けた人はさぞかし驚いていることでしょう。これがバブルかどうか、確かなことはわかりません。しかしながら、こういう驚くほどの上がり方をした資産は、ひとたび下げに転じると、売りが売りを呼んで暴落することがあり、警戒が必要です。

ビットコインは価値判断の基準がない

確かなのはダビンチやゴッホの絵と、ビットコインには共通点がいくつかあるということです。その一つは、株式のようなPER(株価収益率)や配当利回りといった価値を判断する基準がないことです。それだけに、価格高騰がバブルかバブルでないかは、何年かたってから判断するしかありません。

いずれにせよ、こうした価値判断の基準がない資産は長期でじっくりと資産形成する対象としてふさわしくありません。それよりも、株価指標で見て割安な日本株に投資した方が、堅実に資産形成できると思います。

ただし、日本株なら何でもいいというわけではありません。私は配当利回りの高い大型優良株が堅実だと思います。無配でまともに利益を計上したことがないベンチャー企業が、数百億円の時価総額まで買われている新興株市場ではバブル銘柄をつかむこともあるので、注意が必要です。成長性や夢だけでなく、PERや配当利回りなどを見て、割安と判断できる銘柄を選びましょう。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏とレオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏が交代で執筆します。
窪田真之
 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(当時)入行。99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年所長。大和住銀では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。

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