2019年5月20日(月)

国務長官、対北朝鮮「前提条件なしで対話も」
米政権の溝深く 真意巡り波紋、大統領は圧力路線変えず

2017/12/13 18:29
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【ワシントン=永沢毅】ティラーソン米国務長官が12日、前提条件なしで北朝鮮との対話に応じる可能性に言及した。「少なくとも挑発行為の抑制が対話の前提」としてきた米政権の方針を大きく転換しかねないだけに、その真意を巡って波紋が広がった。トランプ大統領は引き続き圧力を重視するが、日本政府は北朝鮮包囲網がほころぶ事態も起きかねないと警戒している。

ティラーソン氏の発言は、講演後の質疑応答で飛び出した。司会者から北朝鮮との対話の条件について問われ「北朝鮮が話したいときはいつでも対話する用意がある。前提条件なしだ」と表明した。無条件での対話は、「対話のための対話」を否定してきた従来の政権の立場を大きく翻す。核開発に固執する北朝鮮にとっては願ってもない話といえる。

その後、ティラーソン氏は北朝鮮がミサイル発射などを続けるなら対話は難しいとの認識を示し「静かな時間を持たないといけない」と述べた。一定期間の挑発行為の抑制という事実上の条件を示した形だ。ティラーソン氏は8月にも対話の条件について「最良のシグナルはミサイル発射を停止することだ」と語っている。この条件は、12日の発言と基本的に同じだ。

トランプ政権は「最大限の圧力」をかけて経済的、外交的に北朝鮮を封じ込め、核放棄を前提にした対話に持ち込むシナリオを描く。ただ、ティラーソン氏は12日「核計画を断念する準備ができてテーブルに着くなら私たちも初めて対話に応じる、なんてことを言うのは現実的じゃない」とも指摘した。

ティラーソン氏の北朝鮮に対する融和的な発言は目立つが、政権内ではマティス国防長官らもティラーソン氏の外交努力を支持している。

政権内の亀裂が露呈するのを最小限にとどめたいホワイトハウスは、すぐさま発言の打ち消しに動いた。サンダース大統領報道官は「トランプ大統領の北朝鮮への見方は変わっていない」との声明を出した。トランプ氏は10月、北朝鮮との対話に意欲を示すティラーソン氏に「時間の無駄だ」と伝えている。政権高官の発言の食い違いは今に始まったことではない。

背景には取り沙汰されてきたトランプ氏との確執が見え隠れする。米メディアは11月末、ホワイトハウスによるティラーソン氏の更迭計画を一斉に報じた。8月に白人至上主義者を擁護したトランプ氏に距離を置く発言をしたり、ティラーソン氏が7月の非公開会合でトランプ氏を「ばか」と呼んだと10月に報じられたりしたことが伏線となっている。ティラーソン氏は更迭観測を「お笑いぐさだ」と一蹴し、今のところは国務長官にとどまる姿勢をみせる。

トランプ氏がこだわるイラン核合意の見直しや地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱を巡り、国際協調を重視するティラーソン氏はトランプ氏に反対の姿勢を示してきたとされる。クビになろうがなるまいが、言うべきことは言わなくてはいけない――。政権が最重要視している対北朝鮮政策での発言は、ティラーソン氏のトランプ氏への静かな抗議にも映る。

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