日本の国際観光競争力(十字路)
日本政府観光局によると、2016年の訪日外国人観光客数は約2404万人の世界15位と躍進した。観光経営学では観光地の集客面での競争力はどこで差がつくのかに関心が集まる。豪ラ・トローブ大学のジェフリー・クラウチ教授は自然や文化、インフラなどの観光資源をうまく活用すれば、多くの観光客が訪れると指摘している。
世界経済フォーラムは国際的な観光競争力指数を作っている。15年の分析結果は総合でスペインが1位、フランスが2位だった。文化や自然といった観光資源の豊かさや産業の発展でトップクラスだ。
日本はアジアではトップの9位となり、11位のシンガポールを上回った。何が差を付けたのか。日本は「おもてなし」では世界1位で、自然・文化の観光資源は11位、世界遺産数も12位と評価される。
しかし、それ以外では課題が多い。価格競争力119位は仕方ないにしても、海外観光客へのマーケティングやブランドづくりは57位とシンガポールの6位に比べ劣る。旅行者へのサービス・インフラへの満足度は75位、ATMでのクレジットカードの利用しやすさは73位と不満が高い。
商店ではクレジットカードやモバイルで決済しづらく、観光客へのサービス・インフラ整備での課題が大きい。環境への優しさも53位と低い。自慢の安全・安心面も22位とシンガポールの8位を下回る。ビジネス客は出張後に滞在を延ばして観光を楽しむ先として日本を世界129位に位置づける。優れた資源を活用してビジネス客を引きつけているとはいえない。
海外観光客目線での魅力作りが重要だ。日本の自然や文化、ハイテクをブランド化し、その魅力を情報発信することが緊喫だ。例えば知人の香港人観光研究者もロボットを使ったホテルやiPS細胞が日本らしいハイテク観光資源だと興味津々だった。
(京都大学経営管理大学院教授 若林直樹)