最優秀はヘテロDB 米エヌビディアがAIイベント
米エヌビディアが東京・お台場で開いたイベント「GTCジャパン」で、同社が支援する人工知能(AI)関連スタートアップが事業内容を競うプレゼンテーション大会が開かれた。最優秀企業には、画像処理半導体(GPU)を活用してデータベースを構築するスタートアップのヘテロDB(東京・品川、海外浩平社長)が選ばれた。

■得意分野をGPUに任せる
プレゼン大会は、エヌビディア製のGPUを使い、ディープラニング(深層学習)などを利用したAIサービスや製品を開発する企業を支援する「インセプション・プログラム」に選ばれた約80社のうち19社のAI関連スタートアップが参加。事業内容や今後の開発計画などを説明した。
最優秀企業に輝いたヘテロDBは、GPUを活用したデータベース構築を手掛ける。GPUはこれまでハイエンドのゲーム用コンピューターやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)に活用されることが多かったが、ヘテロDBではデータベースの一部にGPUを活用し、処理の高速化とシステム運用を単純化するサービスを展開する。
海外社長は「データベースの処理の中にはGPUが得意な部分もある。ゲーミングやHPCなど自動車レースのF1のような領域で使われていたGPUを広く使える存在にしたい」と話した。選考したエヌビディアの山田泰永シニアマネージャーは「GPUの新たな活用領域を切り開いた」と評価した。
AIで動画着色、すでに放送も
他にも多彩な事業を手掛けるスタートアップが事業を説明した。リッジアイ(東京・千代田、柳原尚史社長)が手掛けるのはAIを活用した動画の着色だ。鮮やかな紅葉の画像がスクリーン画面に映し出された。葉は風で揺らぎ、青空に映り込んだ雲の流れは速い。「これは白黒で撮影した映像に深層学習で着色したものです」。柳原社長が技術を説明する。
NHKアート(東京・渋谷)と共同で開発した映像着色技術だ。戦後すぐの白黒動画をAIを使ってカラー化し、8月のNHK番組で実際に放送した。これまでの白黒動画の着色は、資料を基に人が着色することが多かった。「数百倍省力化し放送クオリティーを保てた」と柳原社長は自信を見せた。
MDR(東京・千代田、湊雄一郎社長)は量子コンピューターを開発するスタートアップだ。2008年に起業し、組み合わせ最適化問題を高速で解く量子アニーリング方式と幅広い種類の計算を高速化する量子ゲート方式の両面から研究開発を進める。湊社長は「参考になる同業が少ないため、実装を組み合わせて全部自社で手掛ける必要がある。今後は量子コンピューター向けの深層学習理論を考えたい」と話した。
(企業報道部 矢野摂士)