2018年11月18日(日)

男にできる?悩み、極めた美 シンクロ安部篤史(上)

2017/12/17 6:30
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華やかな水着をまとい、明るい化粧をほどこした女性の中に、短く刈り上げた髪と引き締まった筋肉が印象的な男性が一人。水中に入れば、女性顔負けのしなやかさと、男性ならではのダイナミックな演技で見る人を魅了する。安部篤史(よみうりランド)はシンクロナイズドスイミング男子の第一人者として競技をけん引してきた。

2015年の水泳世界選手権から種目に採用された混合デュエットには2大会連続で出場した。今年7月のブダペスト大会ではフリールーティーンで「SNAKE」の曲に合わせ、手足のくねりや足技で蛇の世界観を表現。表彰台までわずか0.7667点差の4位と健闘した。

「記憶に残る演技が初めてできた」と安部。すっかりアスリートの顔になったが、実は競技経歴が3年に満たない。もともと水中パフォーマンス集団「トゥリトネス」に10年以上所属していた。

女子選手にはないメリットを自身の体に感じる

女子選手にはないメリットを自身の体に感じる

水深が腰の高さほどのプールで踊りや笑劇を披露するショーの演じ手だった安部のもとに14年の冬、世界選手権の混合デュエット代表を決める選考会の話が舞い込んた。「寝耳に水。男が参加できるシンクロなんて」

当時、日本水泳連盟に登録するシンクロの男子選手は10人に満たなかった。演技経験が豊富で、東京にある幾つかのシンクロクラブの練習に顔を出していた安部に白羽の矢が立ったのは自然な流れ。「世界などとても」と思いつつ、仲間の後押しもあって翌年2月には日本代表になっていた。

そこから世界水泳までの5カ月はいばらの道で、足のつかない水深2~3メートルのプールでの演技は未知の世界だった。体力が続かず、立ち泳ぎや腕をかく動きも満足にできない。コーチの花牟礼雅美は「毎日がいっぱいいっぱい。突貫工事だった」と振り返る。

不断の努力で世界への道開く

そんな安部を世界レベルに押し上げたのはいちずなまでの真面目さだった。花牟礼によれば「習得には時間がかかるが、成長したいという意欲は誰よりも強い」。パートナーの足立夢実も「何でもこつこつ頑張れる。必ずうまくなる」と信頼を口にする。

171センチ、63キロ。決して大柄ではないが、安部は「体積がある分、演技が映えてジャッジにアピールしやすい」と女子選手にないメリットを肉づきのいい自分の体に感じている。一方、浮力や柔軟性では女子に及ばない。「(筋肉があっても)浮きやすい体幹の鍛え方を研究している。故障せず無理なく体を柔らかくする方法も見つけたい」。答えはなく、模索の日々を過ごす。

世界的にみてもシンクロへの男子の参入はまだまだ進んでいない。「何も道筋がないところを切り開くのが楽しい」と言い、もちろん2年後の世界水泳にも出るつもり。「いつか(混合デュエットが)五輪種目になるように、結果を出して競技を盛り上げたい」。開拓者の挑戦は続く。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊12月12日掲載〕

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