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ゲートの一瞬 綿密準備 中央競馬のスターター(もっと関西)

ここに技あり

ファンファーレが鳴り、馬が一斉にゲートから飛び出す。ファンならずとも一度は目にしたことがあるであろう競馬のスタート。その裏には、馬をスムーズにゲートに入れ、安全にスタートを切らせる人間の技がある。

スタートを取り仕切るのはスターター(発走委員)と呼ばれる人たち。日本中央競馬会(JRA)の関西地区であれば京都(京都市伏見区)、阪神(兵庫県宝塚市)の両競馬場で業務にあたる。4人1組でチームをつくり、各レースのスタートが近づくと、ゲートの前扉を開ける担当者がゲート前の高い台に向かう。残りの3人はゲートの裏に回り、馬を誘導する整馬(せいば)係に綿密な指示を出す。

狭いゲートに入るのを嫌がる馬もいる。その場合は「どの方法が効果的かを考えて対処する」と栗東トレーニング・センター(滋賀県栗東市)公正室の大橋純夫上席発走役。ゲート裏のスターターは個々の馬の癖を頭に入れ、整馬係を通じて様々な手段でゲート入りを促す。横方向に逃げる馬には、ゲートの横にロープを張って逃げられないようにする。ムチが有効ならスターター自らが手にする丈の長いムチを使うこともある。

ゲート入りが済むと裏にいるスターターが手を挙げて合図。台上のスターターは全ての馬に目を配り、前扉を開ける。狭い空間にとどまる時間が長くなれば馬が落ち着きをなくし、事故のリスクも高まるため「全馬が入ったら速やかにスタートする」(大橋上席発走役)のが基本だ。ただ、相手は動物。急に立ち上がる馬もいるため開扉のタイミングは難しく、熟練を要する。「経験を積んでタイミングをつかむようになる」という。

レース以外の日のスターターは競走馬の調教拠点に勤務し、練習用ゲートの前で各馬の様子を細かく観察する。ゲートに向かう時やゲート内での癖、どうすればゲートに入るのかなど、多い日は300頭ほどの馬をチェック。全馬の記録をまとめ、台帳を作成する。厩舎関係者にも助言をする。レース当日の朝は台帳を使って会議を開き、スターターや整馬係の間で出走馬の癖などのデータを共有する。

各馬の癖を見分けるには、馬についての相当な知識が必要だ。スターターになれるのは獣医として臨床経験が10年以上ある人や、騎手を養成する競馬学校(千葉県白井市)の教官を務めた人など「JRAの中でも馬に近い職場で長く経験を積んだ」(大橋上席発走役)職員だけ。実際、スターターは中央競馬全体で13人しかおらず、現在、最も若い人でもJRAに入って18年目だという。この仕事の重要さがよくわかる話である。

文 大阪・運動担当 関根慶太郎

写真 山本博文

 カメラマンひとこと スタートの瞬間を狙って観客席に入るが、最前列には大勢のファンが詰めかけてゲートの様子がよく見えない。「現場に着いたら一歩引いて考えろ」。入社間もない頃に先輩に言われた言葉を思い出し、客席上段から望遠レンズを構えてみる。一斉に駆け出す馬とスターターの引き締まった表情がよく見える絶好の撮影位置が見つかった。

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