進化するモビリティー
Innovation Roadmap 2030(2)

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2017/11/20 2:00
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■陸海空で夢が現実に

2030年に向けて陸、海、空で新技術が実用化され交通インフラ革命が起きる。身近な生活でも車や電車などを効率よく組み合わせる新サービスが生まれようとしている。

リニア新幹線は品川―名古屋間を40分で結ぶ(山梨県都留市での試験走行)

リニア新幹線は品川―名古屋間を40分で結ぶ(山梨県都留市での試験走行)

10年後、ビジネスや生活スタイルを変えるのが東京・品川と名古屋の間で開業予定の「リニア中央新幹線」だ。地上の移動手段としては究極に近いスピードで走る。

リニアの営業運転の最高時速は約500キロメートル。現在1時間30分程度かかる品川―名古屋間を40分で結ぶ。東海道新幹線の最高速度は285キロメートル。300キロメートルを超える海外の高速鉄道に見劣りしていたが、リニアの登場で形勢は逆転する。

世界初となる超電導リニアは、日本が誇るハイテク技術の結晶といえる。マイナス269度という超低温まで冷やして超電導状態にした磁石を使い、車両を約10センチメートル浮上させて前に進む。JR東海のリニア車両「L0系」の開発には100社近くの日本企業が参画し、営業運転ができる水準まで技術を高めた。

超電導磁石に強い三菱電機東芝などの多くの企業が、営業運転車両や設備向けの受注にしのぎを削る。車両の量産から撤退を決めた三菱重工業も「部品まであきらめたわけではない」(関係者)と意地を見せる。

記録上は最高603キロメートルまでスピードを上げたリニア。その2倍、ほぼ音速をめざすのが米国の経営者イーロン・マスク氏が主導する「ハイパーループ」構想だ。

真空状態に近い空洞のチューブ内でカプセルを磁力で浮上させ、最高時速1200キロメートルで走る。英ヴァージン・グループからも支援を取りつけ開発速度を上げている。

英ロールス・ロイスが計画する無人船(同社提供のイメージ)

英ロールス・ロイスが計画する無人船(同社提供のイメージ)

海上も変わる。自動化が最も遅れていた船舶。海上は通信環境が悪く無人での航海は難しいとされていたが、日本の官民が自動運航船に搭載する基幹システムの開発に乗り出している。

商船三井日本郵船といった海運大手と、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)など造船大手が国土交通省と連携する。狙いは自動運航に必要なシステムを共同開発して国際標準にすることだ。気象条件や他の船、障害物などの情報を瞬時に分析し事故を未然に防ぐ。まず2025年までに国内で建造する250隻に搭載する計画だ。

ノルウェーが自動運航船に特化した実証実験海域を新設するなど、世界でも機運は高まりつつある。英ロールス・ロイスが20年までに開発する無人船は、自動運航と陸からの遠隔操作を組み合わせて船上を無人にする。

かつて世界一が指定席だった日本の造船業界。だが韓国や中国メーカーの安値攻勢に押され、シェアを下げ続けた。無人船にはコスト削減だけでなく、船員の居住空間を減らした分だけ貨物の積載量を増やせるという利点もある。新分野で主導権を握り、造船ニッポンが再興へこぎ出す。

空でも画期的な乗り物が出てくる。電気飛行機の開発では、本職の米ボーイングや欧州エアバスだけでなく、独シーメンスや米ウーバーテクノロジーズといった異業種も参入する。こぞって開発を目ざすのは超小型の「空飛ぶクルマ」だ。

「空飛ぶクルマ」を試作するトヨタ自動車の社員有志ら(愛知県豊田市)

「空飛ぶクルマ」を試作するトヨタ自動車の社員有志ら(愛知県豊田市)

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2」で、主人公のマーティが空飛ぶクルマの曲乗りを披露した「未来」設定は2年前の15年だった。少し遅れたが、空想にすぎなかった技術は、ドローンなどの急速な進歩により実現しようとしている。

シェアリングエコノミーの台頭で自動車の利用は便利になるが、渋滞にはまれば台無しだ。ならば空へ。日本でもトヨタ自動車の支援する有志団体が世界最小の「スカイドライブ」開発をめざし、若手の精鋭約100人が研究を続ける。ウーバーはヘリコプター大手と組み、空飛ぶタクシーを開発中だ。ボーイングと米格安航空会社(LCC)傘下のズーナムエアロ社は30年までに10~50席級の電気飛行機を完成させる計画だ。

陸海空で夢物語だった構想が世界で動き始めている。

■キーワード「MaaS(マース)」

ソフトウエアを使う感覚で、自動車や電車など複数の移動手段を組み合わせるサービス「MaaS(マース)」が近未来の交通のキーワードになりそうだ。モビリティー・アズ・ア・サービスの略で、完全自動運転やコネクテッドカー、シェアリングなどの進化によって起こる移動サービスの革命を指す。

例えば東京から富士山に旅行する場合、利用者はスマホアプリなどで出発地と到着地を指定すると最短の移動ルートを検索できる。自家用車がなくても、約束の時間になると自宅前にタクシーがやってきて、最寄り駅まで移動。鉄道やバスなどの公共交通機関の待ち時間を最小限にして目的地まで行くことができる。

マースは「モビリティーのサービス化」ともいえ、この取り組みはフィンランドなど欧州で先行している。欧州では若い世代を中心に車の「非所有」の流れが強まっていることもマースの普及を後押しする。

既存の業界の枠組みを超えた新たな連携を生み、人間の移動手段のあり方を大きく変えそうだ。マース関連事業を手がけるのは現在、スタートアップが中心だが、市場拡大をにらみトヨタ自動車など自動車大手も参画し始めている。

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