ビットコイン先物、注目はサーキットブレーカー - 日本経済新聞
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ビットコイン先物、注目はサーキットブレーカー

ビットコイン先物が日本時間今朝8時から米シカゴ・オプション取引所(CBOE)で始まった。1万5000ドルから1万6000ドルの水準で乱高下している。複数のビットコイン取引所価格との乖離も目立つ。いまだ価格を平準化させる裁定機能は働かず、市場が本格的に機能しているとは言い難い。注目度は高いが、価格変動が極めて激しいので、先物市場関係者も投資家たちも慎重な姿勢だ。

先物市場の視点では、サーキットブレーカーがいつ発動されるか。一般的に取引が過熱したときに、一定時間、売買を中断する取引所のシステムだ。一日に20~30%もの値幅で乱高下すれば、通常はただちにサーキットブレーカーが発動される。さらに、先物売買参加者が破たんした場合の対応も問題視される。通常は売買清算業者(クリアリング・ハウス)がリスク管理者となるが、今のところ、大手投資銀行の多くはビットコイン先物取引仲介業務参加を当面見送る姿勢だ。参加を表明している米ゴールドマン・サックスも、一部の顧客に限定して対応する方針だ。結果的に実際に参加するのは中小のブローカーとなる。レバレッジは2倍程度に抑えられるので通常のFX売買に比べ「おとなしい」様相ではある。

長期的には、先物取引が加わることで、ビットコインのバブル・リスクが現実的となろう。スポット売買だけでは市場規模も限定的だが、先物取引でレバレッジがかかると、潜在的債務は無限に拡大するからだ。過去のバブルを見ても、レバレッジの高さが債務不履行を誘発した事例が多い。

個人投資家の動きだが、外野で騒がれるものの、意外に冷静だ。筆者のツイッターアカウント@jefftoshimaで、週末にアンケート機能を利用して問うてみた。「あなたに現価値100万円相当のボーナスあげます。ただし受け取りは10年後。選択肢は4つ。ビットコイン、金、円紙幣、ドル紙幣。あなたならどうする」。結果は金51%、ビットコイン20%、ドル紙幣17%、円紙幣12%であった。

次に、受け取り時期を「2018年1月1日」に変えて同じ質問を投げかけた。結果はビットコイン31%、金29%、円紙幣22%、ドル紙幣18%。ビットコイン短期売買には一定の興味を示すが、長期的な価値保存機能については極めて慎重な見方だ。

筆者のフォロワーは1万6800人ほど。大半が、株・FX投資家である。金のファンも4000人ほどいる。それゆえ、2つの設問で受け取り時期を変えて、その変化を探ってみた。総じて、世界的に規制が明確ではないビットコイン市場が先物売買の対象となるところに危うさが感じられる。まずは市場環境の整備が必要であろう。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸's OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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  • 出版 : 日経BP
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