2017年12月15日(金)

名張毒ぶどう酒事件、再審開始認めず 名古屋高裁

中部
社会
2017/12/8 10:09 (2017/12/8 13:04更新)
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●「無罪示す新証拠ない」

名古屋高裁前で垂れ幕を掲げる弁護団ら(8日、名古屋市中区)

記者会見する奥西勝元死刑囚の妹、岡美代子さん(8日、名古屋市中区)

 三重県名張市で1961年、女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」の第10次再審請求で、名古屋高裁(山口裕之裁判長)は8日、請求を棄却する決定をした。高裁は弁護団が提出した新証拠について「無罪を言い渡す明らかな証拠に当たらない」と判断した。

 事件は高裁が2005年に再審開始決定を認めながら、翌年取り消すなど異例の経過をたどった。奥西勝元死刑囚は72年に殺人罪などで死刑が確定し、第9次請求中の15年10月に八王子医療刑務所(東京都八王子市)で89歳で病死。妹の岡美代子さん(88)が第10次請求を申し立てた。

 鈴木泉弁護団長は異議を申し立てる方針を明らかにした。

 決定理由で、山口裁判長は「捜査段階の自白は十分信用できる」と判断した。弁護団が提出した、ぶどう酒の瓶を塞ぐ封かん紙から製造過程で使われていないのりの成分が検出されたとする実験結果などについて「実験方法に多大な疑問がある」と指摘。「真犯人が(事件現場の公民館とは)別の場所で毒物を混入し、貼り直したことを強く推認させる」とする弁護側の主張を退けた。

 混入された毒物の農薬が当初自白した「ニッカリンT」ではないと示したとする弁護団の実験についても、「僅かな条件の違いで異なる結果が生じる。このような再現実験を重ねても無意味」と妥当性を否定した。

 名古屋高検の広上克洋次席検事は「適正・妥当な決定だ」とコメントした。

●「残念でたまらない」 元死刑囚の妹

 再審請求の棄却を受け、請求人で奥西勝元死刑囚の妹、岡美代子さん(88)は8日午後に名古屋市内で記者会見し、「裁判所は調べもせずに悪い決定を出し、本当に残念でたまらない」と声を絞り出した。元死刑囚の遺影を傍らに置き、終始うつむきがちだった。

 鈴木泉弁護団長は「新証拠について実質的な審理がないままの決定で、予想以上にひどい」と話し、「決定は死刑判決に戻った不当なもの」と批判した。

▼名張毒ぶどう酒事件 1961年3月28日、名張市の公民館の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡、12人が中毒症状で入院した。自白した奥西勝元死刑囚が殺人容疑などで逮捕されたが否認に転じ、64年の一審・津地裁は無罪判決。二審・名古屋高裁が逆転死刑判決を言い渡し、72年に最高裁で確定した。
 2005年、第7次再審請求で高裁が再審開始を決定したが、その後の高裁の異議審で取り消された。15年10月に奥西元死刑囚は病死し、妹が翌月に第10次請求を申し立てた。

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