2017年12月17日(日)

プーチン氏、圧勝シナリオ ロ大統領選 対抗馬不在
プーチン帝国の行方(上)

ヨーロッパ
2017/12/7 23:00
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 ロシアのプーチン大統領が2018年3月の次期大統領選への出馬を表明した。反政府勢力を弾圧するなかで対抗馬は存在せず、当選確実の選挙となる。24年までの任期をまっとうすればプーチン支配はほぼ四半世紀に及ぶ。長期支配下の経済・外交には停滞色が強まっており「帝国」の疲弊も隠せない。

プーチン氏は6日、西部ニジニーノブゴロドで出馬表明した=AP

 「これ以上の良い場所と機会はないだろう」。プーチン氏は12月6日夕、西部ニジニーノブゴロドの自動車工場の85周年を祝う集会に集まった労働者らの声援を背に宣言した。「来年の大統領選に出馬する」

 続投は確実視されていたが、プーチン氏は出馬表明を先延ばしにしてきた。前日には国際オリンピック委員会(IOC)がロシアの国家ぐるみの不正を認定し、五輪からの排除を決めたばかり。五輪対応の発言に関心が集中するさなかにプーチン氏は出馬宣言してみせた。ロシアメディアは選挙の話題一色となり、五輪問題はかき消された。

 選挙戦に対抗馬はいない。政権の汚職を糾弾して全国でデモを展開する反体制指導者ナワリニー氏の立候補を政権は認めない方針だ。同氏が過去に横領罪で有罪判決を受けたことを理由にしている。ナワリニー陣営は判決は政治的なでっち上げと反発する。

 同氏が出馬してもプーチン氏再選は揺るがない。それでも大統領に「対抗」することは許さない。代わりにプーチン氏の恩師の娘でテレビ番組司会者のサプチャク氏の出馬を認め、「反政府候補」との競争を演出した。

 出馬表明のタイミングを含めて選挙に向けて周到に準備を進めるプーチン氏は政権内の勢力の動きを意識する。欧米と対立が続き、景気も停滞、統制が乱れる兆しが出ているからだ。3年ぶりのプラスが見込まれる今年の経済成長率は1%台にとどまるとの見方が大勢を占める。各勢力ににらみをきかせ、安定を保つには選挙で国民の支持を見せつける必要がある。

 最近は特に地方で政権の意向に逆らう動きが目立つ。ロシア中部のイスラム系共和国タタールスタン。同地はロシア語以外の言語を義務教育の必修科目から外すとするプーチン氏の方針に抵抗する。連邦予算を穴埋めするため、政府は地方の収入の取り立てを強化しており、予算を巡る対立も各地で頻発している。金回りの悪化とともに中央と地方の溝が広がる。

 縮小する経済のパイを巡る政権内の権力争いも表面化した。国営企業の民営化に絡んで16年にウリュカエフ経済発展相が逮捕された事件。背景では強硬派の実力者、国営石油会社ロスネフチのセチン社長が暗躍したとみられ、同氏と対抗する勢力の抗争が法廷で繰り広げられている。

 政権のエリートや財閥は米国による制裁対象リストの拡大におびえる。ウクライナ侵攻に対して欧米が発動した経済制裁は、欧米と取引し、海外に資産を持つこの層を直撃している。トランプ氏が勝利した米大統領選への介入問題を受け、米国は制裁をさらに強化することを決めた。プーチン氏の周辺は対欧米外交のかじ取りに不満を募らせているとの見方がある。

 街頭デモに訴える反体制派は政権内や地方のエリートに揺さぶりを掛けている面がある。「デモだけでは十分ではない」とチェスの世界王者から反プーチン運動に身を投じたガルリ・カスパロフ氏はいう。「エリート層が割れればプーチンを倒せる」。長期支配に漂う閉塞感に対し、プーチン氏は求心力をどう維持するのだろうか。

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