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血圧を上げる薬(十字路)

筆者が知り合いの医者から聞いた話に、血圧を下げる薬はいくらでも処方できるが、上げる薬の処方は難しいというものがあった。カンフル剤のように一時的に血圧を上げる薬はあっても、持続的に上げるには、代謝を上げるなど地道な努力が必要になる。こうした見方はインフレとデフレへの対応にも当てはまるのではないか。インフレに対する経済学の対処法は症例も多く、金融引き締めなど処方箋も数多い。しかし、一度、デフレに陥った状態への処方箋は経済学では十分に見つけられていないのが実情だ。

1970年代に所得政策としてインフレに対処すべく、官民挙げて賃金上昇を抑制する対応が行われ、相応の成果をあげた。今日、デフレに陥った状況を改善させるには、70年代の所得政策の逆、「逆所得政策」が検討されるべき局面だ。そこでは、デフレを抑制すべく官民挙げて賃金の引き上げを行う強い姿勢を示すことが重要な処方箋となる。

2018年の春闘に絡んで安倍晋三首相が経済界に要請した3%の賃上げに対し、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が「IMFの提案した内容に沿ったもの」としたのは、逆所得政策の考えがグローバルな考えにもなってきたことを示すものともいえる。インフレとデフレへの対応は非対称性があり、デフレへの対応は一層困難を伴う。日本のように四半世紀近くも賃上げを経験しない世代が生じたなかで、「賃上げは行われるもの」という意識に戻すには、過去5年のアベノミクスでは十分ではなかった。

今回の総選挙での与党勝利は、アベノミクスの延長として賃上げ要請の持続性を期待させるものだ。人々に逆所得政策が続くとの認識を抱かせることで初めて、先行きへの期待も変わりうる。来年の春闘は以上の観点からもデフレ脱却に向けた政権の本気度を示す試金石になりそうだ。

(みずほ総合研究所チーフエコノミスト 高田創)

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