埼玉県宮代町、モンテローザ子会社と農業協定
埼玉県宮代町は居酒屋チェーン大手のモンテローザ子会社と農業経営参入に関する協定を結んだ。高齢化が進む地域農業の持続性確保と遊休農地の活用を図るため、町が合計で約2万3000平方メートルの農地をあっせんした。同町は首都圏中央連絡自動車道(圏央道)に近いものの町内の交通利便性が低く企業立地の恩恵は乏しかった。農業関連の法人を積極的に誘致して地域活性化につなげる考えだ。

町とモンテローザファーム(東京都武蔵野市)が11月16日に協定を締結した。同社は東武動物公園駅から徒歩で約20分の農地4カ所で水菜やレタスなどを生産する。12月からビニールハウスの建設を進めており、2018年4月に出荷を始める予定だ。
埼玉県農業支援課が企業と自治体をマッチングする制度を活用した。町が遊休農地などの所有者に貸し付けの意向を調査して調整を重ね、土地を確保した。農地中間管理機構である埼玉県農林公社が所有者16人から農地を預かり同社に貸す。町は同社に20万円の参入奨励金を出すほか、農業機械や栽培施設の整備に対する補助金などで支援する。
宮代町は圏央道に加えて東北自動車道からも近いが、町内に国道はなく、幹線道路となる片側2車線道路もない。近隣の市町は圏央道効果などで企業立地に沸くが、同町では大型車を頻繁に利用する物流施設や工場などの企業誘致がなかなか進んでいないのが現状だ。
このため、同町は農のあるまちづくりを町政の基本理念に掲げている。生産者の高齢化による遊休農地の増加に歯止めをかけようと、新規就農者を育成する宮代町農業担い手塾を11年に開始。これまでに30~40代の6人が就農した。
企業や法人が進出すれば活用される農地面積も大きいため12年には農業経営参入の協定制度を創設。今回は3例目の締結になる。
同社の従業員が転居してくるうえ、収穫作業や荷造りなどで地元雇用も期待できる。同社は野菜を主にモンテローザグループの店舗に供給するが、協定には地産地消に努めることも盛り込んでおり、町が50%出資する会社が運営する農業公園「新しい村」の直売所や学校給食向けにも野菜を生産する予定だ。
モンテローザファームの意向で、農地1000平方メートルあたり年間8000円の賃料を支払うが、所有者からは「遊休農地の活用につながるので、無料で貸したい」との声が大きかったという。
同社は将来的には同町での耕作面積を10万平方メートル以上に拡大する計画だ。グループで全国に約1800店ある店舗網の7割が関東にあり「圏央道を利用して物流センターへのアクセスもよく、最適な立地条件」と強調する。
町産業観光課は「今後も農業経営の企業や法人を積極的に誘致し、町の発展につなげていきたい」と話している。