2017年12月15日(金)

学校が消える 少子高齢化の現実
東北の未来を考える 第1部「人口減の衝撃」(3)

コラム(地域)
2017/12/6 0:00
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 青森市の浅虫温泉。かつて「東北の熱海」とも呼ばれた老舗温泉地が消滅危機に直面している。県庁所在地にあるとはいえ、市中心部からは車で30分。2017年(5月1日時点)の地区人口は1292人で高齢化率は51%と5割を超えた。07年と比べ、人口は24%減少し、高齢化率は39%から12ポイントも高まった。

青森市の浅虫温泉は地区人口の減少が深刻だ

 浅虫小学校は13年3月に廃校となり、先に隣の地区に移転していた浅虫中学校も15年に廃止された。地区に食品スーパーはなく、住民は青森市の生協が運行する「買い物バス」に乗って日常の買い物に行く。

 秋田県北秋田市教育委員会は16年度、市内の小中学校15校を31年度までに8校に再編する構想をまとめた。統合後の想定では小学校までの距離は最も遠い場合で32キロ、車で片道50分。地域の住民からは「小学生に酷だ」と猛反発が相次いだ。構想は一部の白紙化を迫られ、同教委は3年以内に新たな具体的計画をまとめ直すことになった。

 しかし、実際に小規模校に通う児童や保護者の思いは複雑なようだ。統廃合が見送られたある小学校に昨春入学した女子児童はわずか1人。中学校で一緒になる隣の小学校は男子のみで、9年間同性の同級生がいない環境を嫌がった女子児童は今春、違う学区の小学校に転校した。

 少子高齢化が進む東北。15年の国勢調査で、各県人口に占める15歳未満人口の割合は6県すべてで全国平均を下回った。一方で、75歳以上の人口の割合は全県で全国平均を上回る。

 世界遺産の白神山地を擁する人口約1400人の青森県西目屋村が15年4月、村唯一の中学校を廃止し、中学教育を隣の弘前市に委託したことが注目を集めた。現在19人が約4キロ離れた弘前市立東目屋中に通う。自治体が中学教育を他の市町村に委託するのは全国的にも極めて珍しい。

 だが、子供を持つ世帯に決して冷たいわけではない。むしろ逆だ。村は「子育て応援日本一の村づくり」を掲げ、所得制限なしで0~5歳児の保育料は無料。18歳までの医療費も無料だ。全校生徒20人の中学校では十分な教育や部活動が難しい。ならば、他の自治体に委託し、浮いた財源をより戦略的に別の施策に振り向ける。それが村の狙いだ。

 冒頭の浅虫温泉も課題解決に向けて動き出している。青森市は10月、「このままでは地域の維持が危ぶまれる」との危機感から、住民主体で今後の地域計画を策定し実行する「浅虫まちづくり協議会」を発足させた。今年度内に「地域計画」を策定し、18年度から市の支援も得て実行に移す。

 学識経験者として協議会の運営委員に就いた青森公立大学地域研究センターの石本雄大研究員は「他地区の協議会が、地域資源を探すことから始めなければならないのに対し、浅虫地区には温泉という資源が既にあり、恵まれている。その温泉をどう活用するかがカギになる」と話す。

 少子高齢化の波は学校の存廃に直結する。自治体を、地域をいかにして維持し存続させるか。各地の取り組みは始まったばかりだ。

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