2017年12月18日(月)

英EU離脱、譲歩案の結論持ち越し 英首相・EU会談
協議継続へ

Brexit
ヨーロッパ
2017/12/5 1:18
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 【ブリュッセル=森本学、ロンドン=小滝麻理子】英国のメイ首相は4日、ブリュッセルで欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長と会談した。通商協議に進む前提となる離脱条件で譲歩案を提示。英国は12月中旬のEU首脳会議で離脱後の通商関係の協議に入るための承認をとりつけたい考えだが、この日の会談での結論は持ち越した。週後半にかけて継続協議することで一致した。

握手する英国のメイ首相(左)とEUのユンケル欧州委員長=4日、ブリュッセル(ゲッティ=共同)

 メイ氏は4日、会談後の記者会見で「建設的な議論をしたが、いくつかの点でさらに協議が必要になった。英国とEUはともに前進したい」と語った。

 英とEUは6月から毎月1回のペースで本格的な離脱交渉を始めた。まずは交渉の第1段階として(1)清算金(2)在英EU市民とEU圏内で暮らす英国市民の権利保障(3)アイルランドと英領北アイルランドの国境管理――の3分野を最優先で協議している。3分野で「十分な進展」があれば、離脱後の通商関係や激変を緩和する移行措置の協議といった第2段階の協議に移る方針だ。

 通商協議に早期に入りたい英は10月のEU首脳会議で第2段階入りの承認を取り付けることをめざしていた。だが、肝心の清算金の交渉が停滞。承認は12月14~15日の首脳会議へ先送りされた。EUは英が譲歩案を示す最終期限を4日に設定。十分な内容が示されなければ、12月も通商協議入りには応じられないと迫っていた。

 EU筋によると、11月半ば以降の事務協議で英国は清算金の支払い項目を巡って「EU側の要求にほぼ応じた」という。EUが「英国に支払い義務がある」と求めてきたEU職員の年金や、過去に支払いを約束したEU予算の未払い金なども支払う姿勢をみせた。

 英は500億ユーロ(約6兆7000億円)前後の支払いに応じる用意があるもよう。EUが念頭に置く約600億ユーロとは開きが残るが、双方とも支払額の合意は離脱交渉の最終盤に詰めることで一致している。

 英国内に住む約320万人のEU市民の権利も、英側は一定条件を満たせば離脱後も今と同じ福祉の権利などを認める方向だ。一方、欧州議会は主に離脱後のEU司法裁判所の扱いや、EU市民の家族呼び寄せの扱いを巡って「交渉が停滞している」と懸念をみせる。離脱を巡る協定は最終的には欧州議会の承認が必要となる。

 12月の首脳会議での通商協議入りの承認に向けて最大の難題となっているのが、英領北アイルランドとEUに残るアイルランドとの国境管理だ。英政府は「開かれた国境を維持する」とするが、離脱後はEU単一市場や関税同盟から撤退するため、具体策が見えない。

 英メディアは4日、EU離脱後も北アイルランドの規制を巡って、現在適用されているEUルールとの継続性に配慮する妥協案で英国とアイルランドが合意したと報じた。EUはアイルランド政府が容認できる具体策を示すよう迫っていたため、通商協議入りへ一歩近づいたとみられる。ただ、メイ政権に閣外協力する北アイルランドの地域政党が反対の構えを見せており、内政上の火ダネを抱えた交渉になる。

 英国が4日の譲歩案で第1段階交渉の3分野すべてで「十分な進展」を示せば、12月の首脳会議で通商協議入りを承認する方針。6月の本格交渉スタートから半年を経て、ようやく離脱交渉が第1段階を乗り越えるメドがたつ。

 EUは議会承認手続きなどを踏まえると離脱交渉の実質的な期限は2018年秋で、残された時間は1年を切ったとみる。通商協議は第1段階以上に交渉のハードルが高いとみられており、無秩序な離脱を回避するための綱渡りの状況がまだ続きそうだ。

 一方、英国ではメイ首相のEUへの譲歩に疑問の声も強まりはじめた。与党・保守党の強硬離脱派の約30人の議員は3日、「交渉でEUに我々の要求が認められないならば、交渉は決裂させるべきだ」との声明を発表。首脳会議で無事に通商協議への移行にメドをつけられなければ、強硬派のメイ氏への圧力が再び高まるのは必至で、メイ氏の政権基盤が大きく揺らぎかねない。

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