競馬実況アナ日記

フォローする

戸惑いと高揚感… 大病して戻った実況現場

(1/2ページ)
2017/12/9 6:30
保存
共有
印刷
その他

2年前の秋、大病を患った。病名は大腸がん。トイレに頻繁に行きたくなったり、便に血が混じっていたりと異変を感じて、近所の病院で内視鏡検査を受けた。検査後、医師から検査結果の写真を見せられ、告げられたのが「大腸の進行がん」だった。

秋の天皇賞を制したキタサンブラック(中央)=共同

秋の天皇賞を制したキタサンブラック(中央)=共同

今や国民の2人に1人ががんになる時代。ただ、そんな統計データは、新聞やニュースで目にするだけで、自分とは無縁のことと思っていた。頭の中は真っ白。とにかく週末の仕事の予定を全てキャンセルし、会社の上司や同僚に事情を説明して、医者から紹介された病院で精密検査を受けることになった。折しも、競馬は秋のG1シーズンを迎えようとしている季節だった。

1週間ほどの検査入院で、今後の治療方針やスケジュールが事務的に、あっという間に決まっていく。そして何より、患者に全ての情報がちゅうちょなく告げられていくのには驚かされた。昨今、本人に告知するのは当然と聞いていたが、実際にいろいろな情報が耳に入ってくると複雑な気持ちになり、平静を保つのがかなりつらかったと記憶している。

治療のスタートは1週間ほどの検査入院。検査入院の後は、毎日病院に通い放射線治療を続けた。季節は暮れからお正月へ。クリスマスや新年を迎える準備で、一年中で最も華やかな季節だったが、自分だけが取り残されて、世の中が動いている気がした。有馬記念も自宅のテレビでぼんやりと観戦していたのを覚えている。ゴールドアクターで吉田隼人騎手がG1初制覇を飾り、歓喜の勝利に沸いていたスタンドも遠い別世界のことのように思えた。このときは正直、競馬場の放送席で仕事に復帰するなど、夢のまた夢と思っていた。

実況席から見た東京競馬場のコース

実況席から見た東京競馬場のコース

翌年2月に手術し、無事成功。検査入院のときの予測よりも症状が軽かったのは何よりだったが、それでも退院後は体調を見ながら週2日程度の時短勤務を余儀なくされた。そして今年に入り、体力の回復を待って会社の勤務時間も徐々に増やしていった。その後は週に3~4日の勤務時間に変わり、病気になる前とほとんど変わらないペースで出勤できるようになっていた。ただ、週末の競馬場への出勤は暖かくなる春以降の方がいいだろうと、上司が配慮してくれていた。

1年半ぶりの競馬場

3月に入り、春のクラシックへ向けたトライアルがヤマ場を迎えるころ、久しぶりに競馬場へいくことになった。中山牝馬ステークスを翌日に控えた土曜日の中山競馬場。最寄り駅から1時間半程の移動だったが、闘病生活を続けていた身にとっては結構な距離と時間に感じられた。そして、通い慣れていたはずの船橋法典から競馬場への道程はとても懐かしく感じられた。病院のベッドにいるときは、こんなに早く競馬場へいけるようになるとは考えてもいなかったので、感無量だった。競馬場で久々にお会いする関係者からも「もう元気になりました?」「心配していましたよ」とありがたい言葉を随分とかけていただいた。

  • 1
  • 2
  • 次へ

電子版の記事が今なら2カ月無料

保存
共有
印刷
その他

競馬のコラム

電子版トップスポーツトップ

競馬実況アナ日記 一覧

フォローする
人けのない阪神競馬場のパドック

 2月29日から中央競馬で無観客競馬が始まった。雪の心配をしなくてもよい季節に入る頃、降って湧いた災難である。競馬が中止になれば、7時間15分にわたる中継番組を別の競馬の話題などで埋めることになるから …続き (3/28)

コースの内側には常に救急車が待機している

 年明けから騎手の落馬事故が相次いでいる。今年の中央競馬開幕日だった1月5日の中山では、同じレースで大塚海渡騎手と三浦皇成騎手の2人が落馬した。1月13日には菅原明良騎手が右大腿骨骨折で全治まで3カ月 …続き (3/14)

2年連続最多勝の打越勇児調教師

 2019年の中央競馬で活躍した人馬を表彰する日本中央競馬会(JRA)賞の授賞式が1月27日、東京都内で開かれました。年度代表馬リスグラシューをはじめ、受賞馬の関係者、年間を通して優秀な成績を収めた騎 …続き (2/29)

ハイライト・スポーツ

[PR]