写真確認に3日 不便なカメラアプリが人気

2017/12/2 6:30
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不便すぎる――。厳しい評価を受けながらも、ヒットしているスマートフォン(スマホ)アプリがある。韓国のベンチャーが開発したフィルムカメラアプリ「Gudak(グダック)」だ。発売して2カ月半で利用者は130万人を突破。33の国・地域でダウンロード数の1位を記録した。日本でも女子高校生を中心にじわり人気が広がっている。

グダックはフィルムカメラ風の写真を撮影できるアプリ。撮影するとフィルムカメラ独特の風合いに仕上がる。ほかの画像加工アプリと決定的に異なるのは、機能や使い勝手までもフィルムカメラに近いところだ。

まず、撮影した写真はすぐに見られない。24枚撮りに設定されたフィルムを使い切らなければならず、そこから3日たってようやく「現像」された写真ができる。撮影直後に出来栄えを確認できないため、「うまく撮れなかったからやり直し」という行動も不可能だ。

連続して撮影できる枚数にも制限がある。24枚撮りのフィルムを使い終えたら、次のフィルムを使えるようになるまで1時間もかかる。さらにデザインもフィルムカメラ仕様を徹底している。

グダックの撮影画面。ファインダーのような小窓から被写体を見る

グダックの撮影画面。ファインダーのような小窓から被写体を見る

アプリを起動すると、画面いっぱいにフィルムカメラのデザインが映しだされる。ファインダーを模した画面の小さな窓を見ながら撮影する。大画面での撮影に慣れているため、窓がとても小さく感じる。多くのカメラアプリが無料のなか、グダックは120円と強気の価格設定だ。

開発したのは2016年創業の韓国のスクリューバー(ソウル市)。カン・サンフン最高経営責任者(CEO)は「(スマホなどで)好きなときに写真を撮影できるのは便利だ。しかし、一枚一枚を大切に記録する概念が薄れているような気がする」と、開発のきっかけを語る。

「誰がそんな不便なアプリを使うのか」。開発に反対する声も多かったという。しかし、7月に発売すると話題となり、15の国・地域の有料アプリサイトでダウンロード数の1位を記録。写真ジャンルに限れば33の国・地域で1位を獲得した。韓国では人気モデルや芸能人らが愛用している。

グダックを開発した韓国スクリューバーのカン・サンフンCEO

グダックを開発した韓国スクリューバーのカン・サンフンCEO

なぜここまでヒットしたのか。「フィルム」にフォーカスしたことが一因とみられる。フィルムカメラは「レトロな雰囲気がおしゃれ」だと、10~20歳代を中心に再注目されている。実際に富士フイルムのレンズ付きフィルム「写ルンです」の月間販売本数(同社の直営写真店の実績)は、15年比5倍の100本以上という。

グダックを利用する17歳の女子高校生は「現像されるまでの待ち時間が楽しい」と笑顔で話す。スマホやデジタルカメラの写真では体験できなかった待つ楽しさを提供する、体験型消費「コト消費」でもある。

韓国では「デジタル疲れ」の消費者に支持されているとの見方もある。カンCEOは「『出来栄えのいい写真しか世の中に出せない』という強迫観念がまん延しているように感じる」と話す。写真共有サイト「インスタグラム」などに投稿するため画像を補正したり、うまく写るまで何度も撮り直したりすることに疲れている消費者が少なくないとされる。

カンCEOはグダック以外の製品も開発している。「世間の常識にとらわれない」「世の中にない製品をつくり続ける」ことを重視し、アプリにこだわらず「ユニークな製品をつくる会社」を目指す。

(企業報道部 斉藤美保)

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