東急の執念実る グーグル日本の渋谷帰還

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2017/12/2 6:30
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■デジタル版「東急・五島モデル」

加藤氏は15年にスタートアップと組み新事業を育成する「東急アクセラレートプログラム(TAP)」を立ち上げた。設立5年以内の企業からビジネスプランを募集し、渋谷や東急沿線の価値向上につながる事業を共創するのが狙いだ。

TAPは加藤氏ら事務局2人のほか、東急グループの25人が関わる。1~2週間に1度のペースで議論し、各事業部やグループ会社とスタートアップとの連携を円滑にする。

17年の第3回で最優秀賞「東急賞」を獲得したのは16年7月設立のWAmazing(ワメイジング、東京・港)。インバウンド(訪日外国人)向けの無料SIMを配り、アプリ経由の宿泊や物販の手数料で収益を上げるモデルだ。

「外国人旅行者を東急の空の沿線住民にする」。加藤史子社長は10月の最終審査で同社のサービスが東急のホテルや各種施設に外国人を呼び込む入り口になると訴え、高い評価を得た。

加藤社長は東急がTAPについて上から目線ではなく、「『僕たちから何をして欲しいですか』と聞かれたことが印象的」と話す。インバウンドは扱う領域が広いが連携においても、「電鉄だけでなく、東急エージェンシーや仙台空港との協議の時間も割いてくれた」(加藤社長)。

東急はTAPを通じて出資もする。第2回で東急賞を受賞したインバウンド向けのガイドマッチングサイトを運営するHuber.(ハバー、神奈川県鎌倉市)には16年に少額出資し、東急の拠点でもガイドのマッチングを手がける。

ただ、囲い込みはしない。実はワメイジングとハバーはJR東日本の同様のプログラムでも優秀賞を獲得したが、これに乗じて「東急・JR東・スタートアップ連合」でインバウンドの誘客に取り込むことになった。

かつて東急電鉄は「強盗慶太」と異名をとった買収王、五島慶太氏を事実上の創業者として戦前戦後を通じ、沿線に百貨店、文化施設、住宅などを整備し一大王国を築いた。

五島氏は強引な企業買収でグループを大きくする一方、「顧客を自社で囲い込むのではなく、顧客の利便性を追求する街づくり」で人と企業を呼び込み、街に活気を生み出した。今も住みたい街で上位に来る沿線のブランド価値はその成果だ。

デジタル時代の「五島モデル」は目的は同じだが手法が違う。企業を囲い込まず、顧客の利便性のために一緒に新しいサービスを生み出すプラットフォーム戦略。そのカギを握るのが多様性だ。

「渋谷はセンター街などに観光のインバウンドは来るが、ビジネスのインバウンドがない」。東急の加藤氏は現状の課題をふまえ、多様性を磨く必要性を説く。

グーグル帰還を契機に国際的なビジネス交流が活発になれば、スタートアップにとっても海外市場がより身近になる。起業環境の魅力を競う都市間競争でSHIBUYAが世界ブランドになるための挑戦が続く。

(企業報道部 加藤貴行)

[日経産業新聞 2017年11月28日付]

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