2017年12月17日(日)

物価上昇0.8%、ちらつく天井 資源高効果ほぼ一巡

経済
2017/12/1 15:00
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 総務省が1日発表した10月の消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合が前年同月より0.8%上がった。消費増税の影響を除けば、2014年10月以来3年ぶりの伸びだ。ただ要因は、ガソリンや電気などエネルギーの値上げでほぼ完結する。原油価格の上昇と円安で16年後半から物価を押し上げたが、効果も一巡しつつある。消費の拡大が物価を引き上げる姿に転換できないと、物価上昇の勢いはしぼみかねない。

物価上昇は灯油、ガソリンなどエネルギー価格でほぼ説明できる

 10月を振り返ると、宅配最大手のヤマト運輸の値上げで運送料は8%上がった。「iPhone8」の発売をうけ、携帯電話機は16年6月以来のプラスに転じた。一方、携帯電話の通信料は格安スマホを意識した料金引き下げの影響で5.2%下落した。

 全523品目のうち、56.2%の294品目が上昇し、32.7%の171品目は下落した。個別にみると、上昇と下落が入り交じるが、物価上昇は電気・ガス、灯油、ガソリンなどエネルギーでほぼ説明できる。

 0.8%の上昇率のうち、0.6%分はエネルギー価格の上昇によるものだ。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「消費改善に伴う需給要因による物価上昇ではない」と指摘する。

 エネルギー高に依存した物価上昇も一巡しつつある。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「消費者物価上昇率は10~12月で峠を越し、鈍くなる」と予測する。持続的な物価上昇のカギを握るのは賃上げの加速だ。

 財務省が1日発表した17年7~9月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の人件費は前年同期より3.2%増えた。11年1~3月期以来の大きさだ。長期の景気回復で人手不足感も強まり、賃金は上昇している。

 5.5%増えた経常利益と比べると、伸びはなお緩やか。企業の利益のうち労働者の取り分を示す労働分配率は59.2%と、1991年10~12月以来の水準まで下がった。賃上げの余力を残しているとも言え、安倍晋三首相は10月、経済界に3%の賃上げを要請した。

 3%台の伸びは1994年以来の大きさとなる。丸山氏は「外堀が埋まりつつある企業が賃上げへ動けば、インフレ予想を大幅に引き上げる」と話す。夢物語のようだった賃上げ加速で消費が勢いづき、持続的な物価上昇につながるか。来年の春季労使交渉(春闘)の行方は、例年以上に関心が高まりそうだ。

(川手伊織)

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