2018年5月26日(土)

全自動レタス工場輸出 スプレッド、中東に商機
フォーカス西日本企業

2017/12/1 13:42
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 苗の育成から収穫までロボットがほぼ全自動で野菜を生産してくれる。そんな次世代型の植物工場の「輸出」に挑むのが、世界最大級のレタス工場を運営するスプレッド(京都市)だ。少ない水で栽培できる利点を中東などで訴求する。

■ロボットが植え替え

亀岡工場では1日当たり2万1000株のレタスを生産できる(京都府亀岡市)

亀岡工場では1日当たり2万1000株のレタスを生産できる(京都府亀岡市)

 関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)の一角で、同社が2018年の稼働を目指すレタス工場「テクノファームけいはんな」の建設が進む。1日当たり生産量は世界最大級の3万株だ。

 レタスの種をまき、培地で発芽させる作業は人が携わる。この後の主要工程はロボットなどの先端技術が活躍する。

 養液に浮かべたパネルにレタスを植え、水耕栽培で育てる中で、パネルが手狭になるとロボットが別のパネルに植え替える。根や葉を傷つけないよう根元のプラスチック容器だけをつかむなど、動作に工夫を凝らす。

 そしてベルトコンベヤーやクレーンがパネルを栽培棚に運ぶ。手間がかかる収穫までの工程が工業製品のようにほぼ人手を介さず実現する。従業員は約30人と従来工場から半減する見通しだ。

 「植物工場ならば今の農業が抱える課題を解決できる」。稲田信二社長がスプレッドを創業し、京都府亀岡市に日産2万1千株のレタス工場を稼働させたのは07年。今や17年3月期の売上高約8億円、従業員数約130人の企業に育った。

 植物工場は天候などの影響を受けず生産でき、担い手不足の農業を救える可能性がある。だが光熱費などがかさみ、黒字経営は全体の約2割とされる。同社も亀岡工場の操業当初、生産したレタスのうち出荷できる良品の比率は約3割だった。

 照明の強さや温度を工夫し、レタスの重さを均一にするなど試行錯誤を重ね、初出荷から6年で黒字化した。良品率は97%と一般的な野菜工場の6~7割を上回り、1株約200円の販売価格で出せるようになった。「新工場が軌道に乗ればさらに2割は下げられる」と稲田社長は話す。

 新たに挑むのが海外の植物工場の運営だ。まずアラブ首長国連邦(UAE)の農業関連企業、マダールファームが19年に竣工する工場に栽培ノウハウを提供する。日産3万株以上の見込みだ。

 中東では水資源が足りず露地栽培が難しい。UAEではレタスの空輸も多いという。水資源の98%を再利用できる循環システムなどを移植し、コスト低減を後押しする。

■時間との闘い

 世界の植物工場にシステムや資材を提供したり、運営を請け負ったりする。将来は100カ所の工場へのノウハウ提供を目指す。16年には65カ国・地域の企業や自治体から工場支援の依頼や相談が300件超あった。

 技術力も磨く。5年後をめどに温度や湿度といった条件を自動で最適化する人工知能(AI)を開発。工場の各地点のセンサーから集めた情報を分析し、外気温との差などで栽培効率が下がってもAIが対応する「賢い」工場に発展させる。

 太陽光を利用する植物工場では農業先進国のオランダなどが先行する。人工光タイプに強いスプレッドも海外勢の追い上げは「時間の問題」(稲田社長)と危機感を強める。省力化と海外への挑戦は時間との闘いだ。

■野菜の販路拡充、2300店に
 量産できても売れなければ意味がない。スプレッドは自社ブランド「ベジタス」を立ち上げ、従業員による試食販売や調理法の提案もしている。グループ会社と組み、新鮮なまま全国に届ける低温輸送の体制も整えた。
 「当初、工場産野菜は嫌がられることもあった」(稲田社長)が、栄養価は露地栽培と遜色ないという。水耕栽培に特有なみずみずしい食感や、丸ごと食べられる利点も受けて固定客が増加。販路はスーパーなど約2300店に広がっている。

(京都支社 浦崎健人)

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